昨年、持ち株会社を設立し、ビジネス転換を進めている北國フィナンシャルホールディングス。「オープンなデジタル地域主義」を掲げ、自身がフィンテック企業となって「デジタル」「人」「店舗」を3本の柱に、地域と積極的に協業することを目指している。従来のモデルをモダナイズし、デジタルバンクに昇華させようとする取り組みの変遷と戦略、そしてフレームワークについて、同社代表取締役社長の杖村修司氏に聞いた。
※本コンテンツは、2022年1月27日に開催されたJBpress主催「第2回 金融DXフォーラム」Day2の特別講演Ⅲ「北國FHDが目指す『オープンなデジタル地域主義』とは?」の内容を採録したものです。
北國FHDが推進する「真のデジタルバンク」とは?
北國銀行は、石川県を地盤として北陸三県を主たる営業エリアに持つ地方銀行だが、国際統一基準行として海外展開にも注力するという特色を持つ。シンガポールの支店に加えて、今年はバンコクとホーチミンに現地法人を設立、顧客企業の海外展開を支援する。
さらに2021年10月には、北國フィナンシャルホールディングス(以下、北國FHD)として持ち株会社を設立。傘下にはリース会社や保証会社、カード会社、投資助言会社、コンサルティング会社などが並ぶ。
新組織のキーワードは「オープンなデジタル地域主義」だ。「持ち株会社という形になっても、銀行というブランド自体は変わりません。お客さまの窓口には、銀行の担当者がアカウントマネージャーとして位置付けられています。グループ内のシナジーを生かしながら、お客さまに役立つ地域の総合会社を目指しているのです」と、杖村氏は語る。
さらに、この新組織ではデジタルツールを利活用することで、10社以上の子会社が、組織の縦割り構造を意識せずに、あたかも1つの会社として機能的に運営することが可能になっている。「地域のお客さまにデジタルの良さを伝える先導役になることも、私たちのミッションだと思っています」と語る杖村氏。顧客起点のコミュニケーションと、先端技術を掛け合わせたビジネス。それが、北國FHDの目指す「真のデジタルバンク」だという。
従来のインターネットバンキングは、あくまでもリアル店舗の取引を補完する位置付けであり、店舗で可能な取引の一部をネットで代行するのが一般的だ。しかし、北國FHDが目指すデジタルバンクは、個人はもちろん、法人取引も全てデジタルで完結させる。それによって単なるデジタル化ではない、対面も融合させた高付加価値の実現を狙う。
「私たちはデジタルでほぼ100%の事務処理を可能にしながら、対面の接客も含めた高いバリューをお届けすることが、これからの主流になると考えています。業界外からフィンテック企業の参画もあり、差別化ができない中途半端なデジタル化では、この先、コモディティ化していくのは避けられません。そこで、生き残るためにもデジタルを活用し、いかに対面の付加価値を上げていくかが重要になります」