「経験や勘による判断から数値での管理」に

 くら寿司が開発したさまざまなシステム中から、ここで2つの事例について紹介しよう。これらのシステムが、これまでのどのような不便を解決したのか、これによって従業員と顧客にどのようなメリットをもたらしたのかを述べたい。

 まず「時間制限管理システム」と「製造管理システム」について。

 これは、レーンを流れるすしの量や顧客の滞在時間を把握して、流す商品、数量、タイミングを自動で分析するシステムだ。

 従来は、これらを従業員の経験と勘を頼りに判断していたために、顧客満足度が低下したり、廃棄率に変動があった。また、不足しがちなすしを準備したり、顧客が食事を終えた皿の積み重ねの状態を目視で確認するなど従業員の負担が大きかった。

 これらを解決するために、情報通信技術(ICT)を活用、流れている商品の種類や時間を管理するシステムを導入した。受け付けを終えた顧客に届けられる「自動案内」のデータを厨房と共有することによって、顧客の人数と滞在時間から目安となる消費量を算出。「抗菌寿司カバー」のQRコードにより、流れている商品の種類や時間を管理。これらのデータを分析することで、新たに準備する商品と提供するタイミングを算出できるようにした。

 これによって、数的データで管理できるようになり、廃棄量の削減が可能になった。「抗菌寿司カバー」に付いているQRコードを使って流れている商品や時間を管理することで、お客の消費動向を数値化し、無駄のない商品提供が可能になった。このシステムが導入される以前の廃棄量は12%以上であったが、導入後は6%となり、現在は3%となっている。

 さらに、データを可視化できるようになったことから、あるべき数字や目標とする数字などの情報を共有化し、店舗責任者や従業員を育成することが容易になり、出店拡大にも寄与した。