EV化で工場のDXが加速

 モビリティにまつわるテクノロジーの進化は、クルマ作りを行う工場の高度化を促す。操縦性能や快適性を高めるための各種デバイスの搭載はもとより、環境性能や自動運転機能のさらなる向上のために先進的なハードウエア、ソフトウエアが次々に投入されるようになってきている。

 また、顧客のニーズに合わせた生産の多様化への対応も自動車メーカーにとっては大きなチャレンジである。BMWグループでは現在、毎日1万台の新車を生産しているが、全40車種に1台あたり100通りのオプションを設定しているので、結果的に気の遠くなるような数のバリエーションに対応しなくてはならない。また物流の側面でも31の工場を通じて1800社のサプライヤーから毎日のべ3000万個の部品を仕入れ、23万個もの部品がトレイに整理されている。ただでさえ複雑な生産現場のオペレーションにEVの生産という新たなミッションが加わることで、クルマを生産する工場側も進化の足並みを加速させなければならないのだ。

 EVモデルである「iX」や「i4」に搭載するための第5世代高電圧バッテリーおよび駆動系コンポーネントの生産を行うディンゴルフィン工場(ドイツ・バイエルン州)は今後のBMWのEV戦略を担う重要な生産拠点となる。BMWは2020年から2022年の間だけでこの工場に5億ユーロ(約665億円)もの投資を行うという。

 ディンゴルフィン工場以外でもレーゲンブルグ工場(ドイツ・バイエルン州)、ライプツィヒ工場、国外ではスパルタンバーグ工場(米国・サウスカロライナ州)、BMWブリリアンス・オートモーティブ工場(中国・瀋陽)(注4)で今後、EVの生産が拡大されると想定されている。

(注4)BMWが2003年に中国のブリリアンスとの提携によって設立した合弁会社。2018年には持ち株比率を75%に引き上げ、BMWが経営権を掌握した。中国国内でのBMW販売台数(2020年)は78万台(ちなみに日本は3万6000台)で、瀋陽に2つある工場の1つ大東区工場では5シリーズとX3に加えてEVのiX3の生産が始まっている。

ヴァーチャル工場で生産ライン最適化をシミュレーション

 最新鋭の設備を導入した巨大な工場でEVを生産するための最適なプロセスを構築するためにはどうしたら良いか?