そもそも社名であるBMWは「バイエリッシュ・モトーレン・ヴェルケ」(「バイエルン発動機製造株式会社」の意味)だ。「M」が象徴する発動機(内燃エンジン)が電気モーターの「E」に置き換わる日も遠からず訪れるということなのだろう。
今回は、メルセデス・ベンツ、アウディ、ジャガー、ポルシェなどの欧州プレミアム自動車メーカーと並び急速にEVシフトを加速させるBMWを例にとって、背後で進む自動車工場のデジタルトランスフォーメーション(DX)についてレポートしてみたい。
iXのBMWらしいところ、らしくないところ
今回のプレビューイベントは完全予約制で、専門の係員がマンツーマンで丁寧に「iX」のスペックの細部に至るまで説明してくれた。残念なことに試乗することはできなかったが、運転席やリアシートに座って約30分間、EVのBMW独特の雰囲気を体験することはできた。
今回、BMW GROUP Tokyo Bayのショールームに持ち込まれたiXは2タイプあるグレードのうち、パフォーマンスを抑えた下位グレードの「xDrive 40」である。
まず外観から見ていこう。ボディサイズは全長4953mm、全幅1967mm、全高1695mm、ホイールベース3000mmで、BMWのミドルサイズSAV「X5」と同等の堂々たる大きさである。トレードマークのキドニーグリル(注2)や薄型の丸目4灯のヘッドライト、Cピラーのホフマイスター・キンクなどのBMWのデザインアイデンティティ要素はしっかり踏襲されており、仮にボンネット先端のロゴが隠されていたとしてもこのクルマがBMWであることは万人が識別できるだろう。
(注2)「キドニー」は「腎臓」の意味。ラジエーターグリルの左右対称の形状が腎臓に似ていることから命名された。
キドニーグリルについてはラジエーターを冷却するためにエンジンルームに空気を送るという本来の機能がなくなったが、その代わりに目立たない部分に自動運転や安全技術をサポートするカメラテクノロジー、レーダー機能、最先端センサーなどが組み込まれているのが特徴である。
また駆動システムは、フロントとリアに1つずつ電気モーターを搭載するAWD(e-AWD)だ。最高出力はシステム全体で240kW(約326ps)、0~100km/h加速は6.1秒となる。床下に配置されるバッテリー容量は70kWh超で、フル充電の走行可能距離は425km(WLTP値、注3)となる。ちなみにハイパフォーマンス版のBMW iX xDrive 50の方は最高出力、0~100km/h加速、バッテリー容量、フル充電の走行可能距離がそれぞれ、370kW(523ps)、4.6秒、100kWh、630km(WLTP値、注3)を誇るという。
(注3)「WLTP値」の「WLTP」とは、(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)の略で、意味は、「乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法」。国や地域ごとにバラバラだった排出ガスや燃費の試験方法が統一されたもの。2018年10月以降、日本国内で販売されるクルマは「WLTP値」の表示が義務となっている。