ITの活用が金融市場構造の変化や市場の急変を招くのではないかという問題は、近年、国際的フォーラムで活発に議論されてきた。ITは金融市場取引に何をもたらすのか? 国際的な議論に日銀局長として関わった山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第39回。
IT技術の活用は、基本的には金融市場取引にメリットをもたらすと考えられます。
ITの活用により、市場での取引を低コストで、迅速に執行することが可能になります。実際、かつての「場立ち」がデジタルに代替されるなど、さまざまなコストの削減も可能になっています。また、取引に伴う「バックオフィス事務」なども自動化の余地が広がります。さらに、PCやスマートフォンの利用を通じて、より広範な人々が市場に参入できるようになります。
このようなトレンドを象徴するのが、米国における株取引アプリ「ロビンフッド」の普及です。2015年に登場した、手数料ゼロで株取引ができる「ロビンフッド」は、新型コロナウイルス感染症拡大の中でさらに利用者を増やし、現在、若年層を含め、1300万人以上が利用していると報じられています。「ロビンフッド」のアプリを利用して株取引を行う人々を指す、「ロビンフッダー」という言葉も生まれています。