基軸通貨である米ドルを発行する米国は、マネーのデジタル化にどのようなスタンスで臨むのか? 世界の議論を大きく左右し得る米国の動向を、元日銀局長の山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第38回。
前回(連載第37回)では、フェイスブックが主導するデジタル通貨「ディエム」(旧名称「リブラ」)の計画が、「グローバルなデジタル通貨」から、「まずはドル建ての米国用デジタル通貨」へと、大きな方針転換を行ってきたことを説明しました。では、米国当局はデジタル通貨に対し、どのような姿勢をとってきているのでしょうか。
「マネーのデジタル化」の2つの意味
近年議論されている「マネーのデジタル化」には、異なる2つの論点があります。1つは、いわゆる「キャッシュレス化」に代表される、支払決済手段のデジタル化という問題、もう1つは、デジタル化された通貨を中央銀行が自ら発行すべきかという「中央銀行デジタル通貨」の問題です。
この点、米国は、前者の意味でのデジタル化については、民間主導により、比較的早くから進んできた国といえます。