IT、市場取引、ロビンフッダー

 デジタル技術革新は、金融市場取引をいくつかの面で変えています。取引が電子ベースで行われるようになるに伴い、高頻度取引(HFT:High Frequency Trading)と呼ばれる、きわめて短時間に高速の売り買いを繰り返す取引が行われるようになりました。

 一方、「透明性重視」の潮流の下、統計や当局による報告書などの公表時間は事前に明らかにされるようになっています。このため、この公表時間を狙ってウェブサイトに自動的にアクセスし、公表資料のテキストなどをAI(人工知能)で判断し、瞬時に自動的に売買する取引が広く行われるようになりました。とりわけ外国為替市場では、あらかじめ設定したプログラムに基づいて自動的に売買を行う「アルゴリズム取引」(アルゴ取引)が拡大しています。これに対し当局の側では、公表文書の文言がAIによる解釈を通じて市場の急変に結び付かないよう、文書の冒頭に不用意な文言を置かないなど、ドラフティングに相当注意するようになっています。

 また、取引の電子化が進んだ当初は、「売買の拠点はどこにあってもよい」との考え方が広まりました。しかし最近では、回線を通じたデータのやり取りのナノ秒(10億分の1秒)単位のスピードが重視され、取引所などと地理的に近い場所が選好される動きもみられています。「マネーボール」などのベストセラーで知られる米国の作家マイケル・ルイス氏は2014年に小説「フラッシュ・ボーイズ」を著し、10億分の1秒単位でのHFTを駆使して、他の投資家を出し抜いて巨額の利益を上げる人々の姿を描いています。

 そして、昨年から今年にかけては、冒頭でご紹介した個人投資家「ロビンフッダー」が、米国株式市場の話題となりました。

 とりわけ衆目を集めたのが、本年初めの「ゲームストップ」というゲーム小売企業の株価変動です。これは、一部ヘッジファンドによるゲームストップ株の空売りの動きに対抗するため、個人投資家がインターネット掲示板「レディット」で同株の買いを呼びかけ、これを受けて同株価が急騰したという事例です。これにより、空売りを仕掛けたヘッジファンドはかなりの損失を被ったと報じられています。