データで見るタイ日系製造拠点の開発部門の実態

 ところで、バリューチェーンの上流機能である開発部門のタイでの実態はどうなっているのか。

 JMACでは昨年2020年10月~11月に「在タイ日系製造拠点R&D開発の実態・課題アンケート2020」を実施した。この結果、「当面現状維持」の見通しをもつ会社(70%)が多く、一方で「拡大傾向」も3割弱(27%)見られ、タイにおける開発部署強化の可能性を示している。

 タイという国全体で見た研究開発投資はGDPの約1%を占めるにすぎない。さらに先述の通り、日系企業をはじめとした外資系製造業では、タイにおいては生産機能を中心に展開している。そのため、タイで開発機能をもつ企業自体が少ない状況ではあるが、「開発機能を拡充させることはあっても減らすことはない」という結果が出ている。

 また、ナショナルスタッフが管理職以上のポジションに占める割合は、開発拠点設立後の年数に相関が見られなかった。10年未満でも幹部への登用が進んでいる拠点もあれば、30年以上でも進んでいない拠点が見られた。つまり、ナショナルスタッフを後継者とした登用が進むか否かは、会社の意思次第だという解釈ができる。これは生産拠点対象としたアンケート調査でも同様の傾向が出ている。

 では、会社の意思、本気をどう実現させていくのか。次回はその手掛かりについて考えてみたい。

コンサルタント 勝田博明 (かつた ひろあき)

日本能率協会コンサルティング(タイランド) http://www.jmac.co.th/jp/
代表取締役 シニア・コンサルタント

製紙会社を経て、2001年JMACに入社。主な専門領域は、日系企業の海外拠点(タイなど)における組織と人の知的生産性向上、組織風土の活性化、現地化促進、人事制度改革・運用支援、開発期間短縮など。 2010年よりJMAC(Thailand)Co., Ltd.代表取締役に就任。タイのみならずASEAN諸国、特にシンガポール、マレーシア、フィリピン、ベトナムなどでASEAN諸国進出・現地展開における生産性向上、仕組みづくり、風土醸成、実行習慣化などの支援を展開している。