(2)異文化適応力の不足
これまで“ひずみ”の一要因に異文化による価値観の違いを軽視してきた実態がある。
ナショナルスタッフに対し、日本人の価値観での行動を期待して押し付けてしまったり、逆に任せるのはよいが意図を具体的に共有せずに放任してしまうことで、お互いにさまざまな誤解や軋轢が生まれてしまう。
日常業務の中で国民文化・価値観の違いを考慮した行動をとることは思いのほか簡単ではない。例えば「権力格差に対する受容度」がタイ(ASEAN主要他国も同様)は高く、日本は中庸だというデータがある 。
実際、日本のスタイルをそのまま持ち込み、「社員に考えさせるために、あえて具体的な指示は控えた」ことが、ナショナルスタッフには「具体的な指示ができないダメな上司」に映ってしまうなどのことが多々ある。
また、労働観も異なり、タイを含むASEANでは(というより、日本以外の多くの国では)残業をいとわず、やり遂げることにこだわるのではなく、定時になれば早々と退社し、家族や仲間との時間を楽しむことを選択。この違いにイライラが募る日本人駐在員は多い。
さらには就社している訳ではないので、転職も多い。タイでは大学卒の社員でも最初に入社した会社で定年を迎える人の方が稀で、転職市場も確立している。これらは良し悪しではなく、違いである。この違いがあることを前提にどうマネジメントしていくかが問われている。