「行政のデジタル化」への関心の高まり

 感染症拡大の中で、一つの特徴的な動きとしては、「行政のデジタル化」に関する人々の関心が大きく高まったことが挙げられます。

 感染症の経済への影響の特徴としては、まず、人と人との物理的な接触が大きく制限されるため、これに依存する産業への影響がとりわけ厳しくなるなど、セクターごとに影響が大きく異なることが挙げられます。また、その影響が売り上げなどに直ちに表れることも特徴です。このため、政策対応においても、スピードと柔軟性が強く求められます。

 各国において、このような迅速かつ柔軟な政策対応のため、デジタル技術の活用が強く求められました。この中で日本では、10万円の給付金の配布においてマイナンバーが十分に機能しなかったことが、世論の激しい批判を招きました。昨年(2020年)秋の自民党総裁選において、3候補が皆、行政のデジタル化推進を主要課題として掲げていたのは印象的であり、その後「デジタル庁」創設に向けた動きが急速に進むことになりました。

 また、行政のデジタル化競争の中で、さまざまな問題があぶり出されることにもなりました。とりわけ日本の場合、マイナンバーの使途がもともと限定されていることや、これと預金口座との紐付けがもともと求められていないこと、根強い押印文化、物理的な会合を前提とする株主総会など、さまざまな論点が噴出しています。これらの論点が急激にクローズアップされた背景にも、感染症への対応という問題意識が強く働いていることは明らかです。

経済活動の変容

 また、感染症の拡大は、「人と人との物理的接触を避けながら、経済社会的な接点は維持する」という観点から、デジタル化・リモート化対応を強く要請します。例えば、「対面教育が大事」とは言っても、リモート教育のインフラがそもそも無ければ、感染症拡大は教育の機会そのものを奪ってしまうことになりかねません。