連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第28回。現在、デジタル技術の応用が期待されている分野として、音楽や芸術のようなアートやエンターテインメントが挙げられる。元日銀局長の山岡浩巳氏(フューチャー取締役、フューチャー経済・金融研究所長)が、どのような応用方法があり得るのかを解説する。
前回のコラムでは、米国プロバスケットボールの「トレーディングカード」に相当するコンテンツがデジタル化され、ブロックチェーン上で取引される事例を紹介しました。今回はより広く、アートやエンターテインメント分野でのデジタル技術の応用を取り上げてみたいと思います。
デジタルアートが75億円で落札
3月11日、米国の芸術家「ビープル(Beeple)」のデジタル作品である “Everydays: The First 5,000 Days” が3月11日、6930万ドル(約75億円)という、デジタルアートとしては史上最高値で落札されたニュースが、世界中の注目を集めました。
現在、絵画や音楽、ゲームなど、ますます多くの創造物が、デジタルで制作されるようになっています。かつて漫画は、Gペンとインクでケント紙の上に描かれるものでした。しかし今では、最初からパソコンで描画される作品が増えています。編集者が作家のもとに日参し、貰った原稿を大事に封筒に入れて編集部に持ち帰る(あるいは印刷所に直行する)といったお馴染みの風景も、徐々に減りつつあります。