連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第29回。音楽や芸術のようなアートやエンターテインメントのコンテンツについて、「NFT」と呼ばれるトークンを活用し取引の対象としていく動きが注目されている。今後NFTが普及・発展していくために何が求められるのか。元日銀局長の山岡浩巳氏が解説する。
本連載の前回、前々回において、デジタルアートやエンターテインメントのコンテンツが、「NFT」(Non-Fungible Token=非代替性トークン)とよばれる「トークン」を用いて市場化される事例を紹介しました。
「トークン」とは、紙幣や硬貨、ゲームのチップのように、当事者間での受け渡し(占有の移転)だけで価値や権利が移転するものを指す言葉として用いられています。このような「トークン」として良く知られているものとして、海外の地下鉄でかつて切符代わりに使われていた(一部の地下鉄では今でも使われている)小さなメダルが挙げられます。
ニューヨークの地下鉄のトークンは、「代替」が可能でした。Aさんが持つトークンとBさんが持つトークンを取り換えても、もちろん両者とも地下鉄に乗れます。これに対し、NFT(Non-Fungible Token)とは、「AさんのトークンとBさんのトークンは違う」という性質を持っています。あえてこれに近いものを挙げるならば、一枚一枚が違う「ポケモンカード」でしょう。