NFTでは、多様なデジタルコンテンツをトークン化し、その複製(海賊版の作成)や二重譲渡を防ぐことが技術的に可能になるわけですが、その法的・制度的な裏付けを、極力明確にしていくことが今後求められるでしょう。例えば、現時点では、NFTの購入者が具体的にどのような法的な権利を持っているのか、必ずしも明確ではありません。例えば、デジタルアートのクリエイターが自分の作品をNFT化した場合、これを落札した人がクリエイターに対し、同じ作品のコピーを別に作ることを止められるのか、また、クリエイターでない人が勝手に他人の作品をNFT化し、これを購入した人はどうなるのかなど、さまざまな論点があります。
さらに、NFTがデジタル化されている以上、これを売買する際には対価のやり取りもデジタル化され、同時に支払われたほうが安全かつ効率的です。このような、支払いも含めた取引全体の法的安定性も課題です。
また、前述のような「トークンバブル」「NFTバブル」の予防策も挙げられます。
これまで、ブロックチェーンや分散型台帳技術が主に用いられたのは暗号資産でしたが、暗号資産はしばしば、投機による大きな価値変動を繰り返してきました。NFTの場合、標準化されていない分、換価は難しいかもしれませんが、一方で「希少性」を持ちやすいため、投機の対象となりやすい可能性は否定できません(これは、一部の「ポケモンカード」への高額のプレミアムと同様です)。
また、2008年のリーマンショック以前には、高度な金融技術が宣伝文句として使われたことが、複雑な金融商品のバブルを生んだ一因となりました。NFTにおいても、キャッチーなデジタル用語がバブルを生むことは、持続的な市場の発展にとって良い結果をもたらさないでしょう。デジタル技術はコンテンツを守り、これを安全に取引させるためのものであり、投機を煽るものでないことは十分認識される必要があります。また、NFT市場がマネロンなどの目的で悪用されることがあれば、NFT市場全体の信認失墜につながりかねません。この点も、関係者は十分注意していく必要があるでしょう。
そのうえで、NFTをクリエイターへの創造のインセンティブ提供と創造物の共有の両立に役立てることが重要であると思います。
デジタル形態のコンテンツは、アナログ形態のコンテンツよりも本質的に複製が容易です。この中で、仮にコンテンツの複製が全く禁じられれば、コンテンツの効用もクリエイターへのリターンも小さくなってしまいます。だからといって、タダでいくらでも複製されてしまうのでは、クリエイターへのリターンはやはり小さくなってしまいます。最適解はその中間にあるわけで、NFTはこれを実現する有効な手段となるべきでしょう。
欧州の動き
NFTを取引する上でも有益な支払手段となり得るのが、それ自体にブロックチェーン技術などが組み込まれている「デジタル通貨」です。この点に関連して、欧州ではトークンに関する興味深い制度整備が進められようとしています。