データ化されたプライバシーはどう運用すべきか?

 スマートシティの問題点とは何でしょうか。それは「なぜ、テクノロジーを導入するのか」「どのようなニーズに対応するのか」をしっかりと考えずにテクノロジーから始めたときに、テクノロジーに関する問題が何事もないように黙殺されてしまうことだ、とブリア氏は話しています。

 つまり、データ化する人間を原資として、いかにしてデータエコノミーに対応していくのか、ということ。そして、生身の人間のプライバシーだけでなく、データ化されたプライバシーをどう運用していくのか、が課題だということです。

 先ほどお話ししたように、ブリア氏は市民のデータ主権を取り戻すプロジェクト「DECODE」の創立者でもあります。DECODEは「分散型市民所有データエコシステム」と呼ばれる長期的なプロジェクトで、APIを自分自身のために使う、データを守るということを一つのミッションにしています。そして、データの権利と義務についてこれから考えていく必要があるからこそ、データをさまざまな企業や行政に提供するために、「どの企業や行政に自分のデータを提供すべきか」を自身で判断できるAPIを開発しています。

 EU全体を見ると、NGI(Next Generation Internet)と呼ばれる次世代インターネットが大きな中心となっています。そして、2020年2月19日、欧州委員会が中国や米国と一線を画す「デジタル主権」を目指して、人間中心主義の人工知能(AI)開発政策について大きな方向性を打ち出しました。これは個人のプライバシー保護だけでなく、データ共有を市民の自己主権として促進することを目指したものです。

『歴史の終わり』を書いたフランシス・フクヤマ氏が国際政治経済ジャーナル「フォーリン・アフェアーズ」に長い論文を寄稿しました。そこには、プラットフォームとユーザーを結び付けるミドルウエアを考えていく必要がある、と記されています。つまり、自分が受け取るフェイクニュースやあらゆるデータを自己主権としてふるいにかけ、精査することができる。そうしたミドルウエアの考え方がEUの中心的な考え方になっています。