投資商品としての評価はまだまだこれから
どうしてこのような結果になってしまったのでしょうか。理由は大きく2つあると思われます。ひとつは、ESG投信そのものの市場規模がまだ小さく、ある一部の特徴ある投信によってパフォーマンスや純資産残高が左右されること。もうひとつは、ESGが盛んな企業はいわゆる大企業が多く、本業に関係なくPRやディスクロージャーに注力した結果、ESGで高い評価を受けてしまったこと――などが考えられます。
投信評価の三菱アセット・ブレインズは「投資する個人から見て、ESGの重要性や投資を通じた関わり合いの意味するところが十分に理解されていない可能性がある。リターンに結びつく結果を見てはじめて興味や注目が湧くのかもしれない」とレポートしています。
ESGは経営哲学としては浸透してきましたが、実際の投資商品や市場としては歴史が浅く、その評価についてはまだまだこれから、と言えそうです。
合理性を追求するか、投資を楽しむか
人生100年を前提に長期の資産形成を考えると、いまESG投資をどうとらえればよいのか、わかりづらいかもしれません。
たとえば、パフォーマンス第一主義という方はいると思います。運用コスト低減を徹底して効率的な分散を図り、長期での複利効果を積み重ねていく。投資に楽しみはいらない、投資で得たお金で自分と家族が人生を楽しむのだ――という人。そのような投資家はESGはさておき、定期的にリバランス(資産配分の見直し)をしながらインデックス投資を追求していくべきでしょう。それは合理的かつ現状ではベターな選択だと思います。
一方で、投資も人生だから楽しみながら取り組みたい、という人がいてもいいわけです。資産運用は長期保有が大前提。自分が好きな株式・投信だからこそ、パフォーマンスにブレが出ても長く保有できると考えることができます。とくに個別株式の世界では、その企業の商品・サービスのファンだから株式を保有するという考え方が昔からあります。
ESGの観点でその企業のファンになったり、その投信の投資哲学を気に入ったりすることもあるでしょう。投資としてはそれも正しいスタンスです。
5年後10年後に期待して少額から先行投資も
ESG投資の歴史が日本より長い欧州では、ESG評価が高い企業の株価は相対的に上がりやすいという傾向がはっきりしています。ただ歴史が浅い日本では、まだその傾向は見られないようです。株式市場の世界では「あのとき投資しておけば・・・」という話は枚挙に暇がありません。いまのうちからESGに先行投資して未来に期待するのは、ある意味で合理的ということもできます。
ESG投資の評価や手法が見えてくるのは少なくとも数年後だと思われます。もし先行投資するなら、あくまで“おまけ”のつもりで少額を分散させることが大事です。たとえば、運用の中心は内外の株式に投資するインデックス投信で、ESG投信は全体の10%以下にしておくなど。あくまで、長期間のなかで様子を見ながら投資していくスタンスです。
あるファンドマネージャーは、株式市場は短期的にはアンフェアであっても、長期的にはすさまじくフェアだと言っています。ESGが企業社会や株式市場に本質的に受け入れられる考え方だとしたら、その評価は5年後10年後に大きく花開くはず。それを待ちながら投資していくのも、合理的かつ楽しい資産形成になるのではないでしょうか。