なによりイスラエルは、ガザでハマスを壊滅させるという目的も人質を全員解放するという目的もまだ達していない。こちらにこそ全力を集中すべきであって、イランとの戦争の拡大によって、本来の戦争目標が曖昧になってしまう恐れもある。

最大の懸念は「核施設」への攻撃

 イスラエルがイランを攻撃するのならば、軍事施設等に限定し、民間人の死傷者が出ないようにするであろうが、懸念されるのは、核関連施設への攻撃である。18日、革命防衛隊の幹部は、イランの核施設への攻撃には、イスラエルの核施設への攻撃で応えると牽制した。

 そして、もし、イスラエルがイランの核施設を攻撃すれば、イランに核武装する口実を与えてしまう。IAEAのグロッシ事務局長は、イランが一時的に国内の核関連施設を閉鎖したと述べている。

 イランの核開発の歴史を振り返ってみよう。

 2002年、イランが大規模原子力施設の建設を行っていることが発覚し、IAEAが査察に入った。ウラン濃縮などの核関連活動も明らかになり、アメリカはイランに制裁を科した。その後、IAEAとの交渉の結果、2003年、イランは全てのウラン濃縮・再処理活動の停止を決めた。

 しかし、2005年6月の大統領選挙で、保守強硬派のアフマディネジャドが当選し、穏健派のハタミ大統領の穏健派路線を変更したため、2006年12月、国連安全保障理事会は、イランに制裁を科すことにしたのである。

 その後も、イランの核兵器開発疑惑は続いていたが、2015年、米英独仏中露6カ国とイランが、イランの核開発の制限と経済制裁の解除を決めた核合意を決めた。ところが2018年5月に、トランプ政権は一方的にイランとの核合意から離脱した。これに反発したイランは、核開発を再開した。