パトリオットを米国に提供、ウクライナ支援支える

 防衛装備移転3原則の改定第1弾は2023年12月でした。①「ライセンス生産品」についてライセンス元の国への輸出を全面解禁する、②国際共同開発品の部品は第三国へ輸出を可能とする、③ウクライナに限らず「被侵略国」全般に非殺傷兵器を提供可能にする―ことなどを決めたのです。3原則(閣議決定)とその運用指針(国家安全保障会議決定)を見直し、より柔軟に対応できるようにしたのです。

 この結果、日本のライセンス生産品については、ライセンス元の国は完成品も含めどこにでも輸出できるようになりました。日本のライセンス生産品は約80品目を数え、輸出対象国は米国や英国、フランス、ベルギーなど8カ国に拡大します。条件が緩和されたといっても、紛争当事国への輸出は依然として制限されており、ウクライナなどの紛争当事国への直接輸出はできません。

 しかし、ライセンス元の国を経た形での輸出は可能になりましたから、例えば、米国企業の許可(ライセンス)を得て日本企業が製造している地対空ミサイル「パトリオット」を米国に輸出し、米国がそれらをウクライナに供給することは可能になります。

パトリオットミサイル=2006年撮影(写真:AP/アフロ)

 実際、改定によってこの形の輸出が可能になった際、米国のバイデン政権は声明を発表し、日本の対応は「米国の(パトリオットの)在庫を補充するものだ」と言及。米国防総省も「米国のミサイル・防衛備品の備蓄に貢献するものだ」とする声明を出しています。ウクライナに武器の供給を続けている米国を支え、米国経由でウクライナを支援する形ができたわけです。

 また、2023年12月の改定では、輸出目的も緩和しました。それまでは「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に限定し、殺傷兵器の輸出は認めていませんでしたが、改定により、「5類型の本来業務の実施」か「自己防護」であれば、殺傷兵器の輸出も可能にしたのです。