背中は口以上に健康について語っている=写真はイメージ(写真:PantherMedia/イメージマート)
  • 「背中」は身体の中で最も広い面積を持つが、これまであまり注目されてこなかった。
  • だが、小説家で鍼灸マッサージ師の松波太郎氏は、うつ伏せの状態で施術ベッドに横になっている患者の背中が健康状態を雄弁に語っていることに気がついた。
  • 患者とのやり取りから背中が語る「からだの言葉」を東洋医学的に読み解く。前編は、背中の中心の「変色」や「ドンドン」という鼓動に注目する。

(*)本稿は『背中は語っている <からだのことば>を解きほぐす東洋医学』(松波太郎著、晶文社)の一部を抜粋・再編集したものです。

◎後編:【鍼灸師が読み解く「背中」(下)】背骨がS字に曲がる女性が来院、ハリと灸でコリを和らげたら「背が伸びたー?」

【患者1】背中の真ん中に「ツノがもげた痕」のような黒ずみが

 この患者さんの背中の中心には、口のようにも変色している発赤箇所があります。四つん這いの姿勢でとらえ直すと、ちょうど体のてっぺんに来るポイントにあたっていて、霊長目ヒト科ヒト属の生物として、もし(もし……ですよ)ツノが生えていたとしたら、そのポイントになるでしょう。

画像:『背中は語っている <からだのことば>を解きほぐす東洋医学』(松波太郎著、晶文社)より

 “口のように赤くも”というように一度喩(たと)えてしまった後ではありますが、より正確にはやや茶や黒ずんでいてもいて、“口”というより“ツノがもげた痕”とでも喩えておいた方がより実状に即していたかもしれませんが、いずれにせよ、このてっぺん付近が変色している――肌があれている背中をもつ方には、共通する症状があります。

「……睡眠の方はまったく問題ないとおっしゃっていましたよね?」
(編集部注:……で始まる「」は松波氏の発言、それ以外は患者。以下同じ)

 その共通する症状を念頭において、わたしは患者さんに再度たずねてみました。再々度や再々々度かもしれません。

「そう言いましたよね? もう何回も言った気がするけど」

 背中全体が一度大きく膨らみました。

背中は語っている <からだのことば>を解きほぐす東洋医学』(松波太郎著、晶文社)

「すみません、ちょっと目を拭いていい? 涙まで出ちゃって」

 質問に退屈したものにしては破格のあくびが出たのでしょう……引き続きわたしは背中の方の“ことば”により傾聴しています。

「1日10時間は寝ているんだから」

 寝すぎじゃないでしょうか?

「しっかりとれているはず」