(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年3月21日付)

フロリダ州にあるトランプ前大統領の自宅、マール・ア・ラーゴも押収される可能性がある(2022年8月10日撮影、写真:ロイター/アフロ)

 ドナルド・トランプにとって、7度目の幸運というわけにはいかないようだ。これまで6度の破産はすべて政界入りする前のもので、その時期によって大きく2つに分けられる。

 1つ目のグループは、1990年代の初めにアトランティックシティでのカジノ経営で手を広げすぎた時のもの。

 2つ目のグループは、2008年の世界金融危機の前後にいろいろな不動産に手を出しすぎて失敗した時のものだった。

 トランプは毎回、米連邦破産法11条(チャプター・イレブン)のおかげで苦境を抜け出してきた。

金持ちだという評判に傷

 その後は主に自身のブランド名のライセンス供与で稼いだ。

 だが、民事訴訟で控訴するのに必要なニューヨーク州地裁への4億5400万ドルの納付を免れるのは容易ではない。銀行とは違い、司法はヘアカット(債務減免)を認めてくれないからだ。

 トランプの破産とホワイトハウスへの返り咲きを邪魔するものは何もない。

 破産なら、2016年の大統領選挙に勝利した時点ですでに経験済みだった。だが、今回の苦境は新しい頭痛の種を2つ作り出している。

 一つはトランプ自身、もう一つは米国という国家にとっての悩みだ。

 トランプの悩みから見ていこう。

 まず、破産すると、本人と支持基盤が重んじている金持ちだという評判に傷がつく。トランプは2016年に自分の純資産を100億ドルだと話していたが、米フォーブス誌が行った最新の推計では26億ドルにとどまる。

ただし、これはあくまで推計だ。一族で経営する複合企業トランプ・オーガニゼーションは非公開企業であり、負債を開示していない。

 たとえこの推計が正しいとしても、トランプの純資産のほとんどは流動性の乏しい資産で占められる。

 ニューヨークの名所になっているタワーや各地のゴルフ場など不動産が中心で、すぐには換金できない。