元慶寺花山天皇が出家した元慶寺(京都市)

『源氏物語』の作者、紫式部を主人公にした『光る君へ』。NHK大河ドラマでは、初めて平安中期の貴族社会を舞台に選び、注目されている。第9回「遠くの国」では、東三条殿に入った盗賊たちが捕縛される。その正体は直秀ら散楽一座で、まひろまでもが仲間だと疑われることに。一方、宮中では、藤原道兼が花山天皇に近づいていき……。今回の見どころについて、『偉人名言迷言事典』など紫式部を取り上げた著作もある、偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

登場人物たちの運命は変えずに視聴者を引き込むことに成功

 歴史ドラマの脚本が、ほかのドラマと大きく違うのは、登場人物たちの運命を変えることはできないということだ。

 織田信長ならば「本能寺の変」で討たれるし、武田信玄ならば信長と戦うことなく病死する。描き方はそれぞれ違っても、大まかな展開は変えられない。ストーリーの大筋は視聴者に「ネタバレ」しているところが、歴史ドラマを制作する面白さでもあり、難しさでもあるのだろう。

 しかし、今回の『光る君へ』はそんな前提を覆してくるので、視聴者としても油断できない。といっても、史実に明らかに反しているわけではない。うまく想像を働かせて、山場を作ることに成功している。

 第1回では、いきなりまひろ(紫式部)の母が、玉置玲央演じる藤原道兼(みちかね)によって殺されてしまう。もちろん、文献にはそんな記載は一切なく、紫式部の母は「病死」したとされている。

 そこをドラマでは、藤原道兼の父、藤原兼家(かねいえ)の権力をおそれて、まひろの父、藤原為時(ためとき)が妻の死を「病死にするように」として、死因を隠蔽。このストーリーに沿えば、病死とされている文献上の記載と齟齬はない。その後のストーリー展開の肝となる悲劇を描くことで、初回から視聴者をぐっと物語に引き込むことに成功した。