亡くなった次女の体内からは向精神薬「オランザピン」が検出された。写真はイメージです(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)亡くなった次女の体内からは向精神薬「オランザピン」が検出された。写真はイメージです(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 昨年3月に、東京都台東区のマンションで4歳の次女に薬品を飲ませて殺害したとして、父親の細谷健一容疑者(43)と母親の志保容疑者(37)が2月に逮捕された。

 2018年には健一容疑者の姉も不審死しており、司法解剖で次女の遺体から発見されたものと同じ薬品が姉の遺体からも検出されている。3月6日、警視庁浅草署捜査本部は、夫婦を健一容疑者の姉の殺人の容疑で再逮捕した。

 夫婦が異常な言動を繰り返していたことが周囲の人々の証言から明らかになっており、精神疾患を患っているのではないかという印象もある。精神科訪問看護師で、ソレイユ訪問看護ステーション所長の西島暁子氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

※記事は短縮版です。より詳しく知りたい方は動画をご覧下さい

──4歳の次女を殺害した可能性があるとして、両親が逮捕されました。司法解剖の結果、亡くなった次女の体内から向精神薬「オランザピン」や、自動車用の不凍液などに使う化学物質「エチレングリコール」が検出されています。西島さんは精神科訪問看護をされてきましたが、報道を見て何をお感じになりますか。

西島暁子氏(以下、西島):ネグレクトや暴力による虐待の結果、子どもが亡くなるという事件はこれまでにも見られましたが、向精神薬で子どもが殺害された可能性があるということに衝撃を受けました。

 志保容疑者が向精神薬「オランザピン」をインターネットで購入していたということにも驚きました。精神科にかかり、精神薬の処方箋をまとめてもらい、入手した薬を売る人がいると聞いたことはありましたが、劇薬である向精神薬がネットで簡単に購入できてしまうことも恐ろしいと思います。

──オランザピンを「睡眠導入剤として使っていた」と語っている志保容疑者ですが、彼女は2019年に自宅で衣類に火をつけたとして、放火の容疑で逮捕されたこともあります。異常な言動を見ていくと「精神疾患を患っているのではないか」という印象を受けます。

西島:普通、「ネットでオランザピンを買う」という発想はなかなか出てきませんよね。睡眠導入剤として使っていたということですが、ただ眠りたいのであれば、市販の睡眠導入剤を購入するのではないでしょうか。

 不眠だけではない症状も持っていたから、オランザピンをわざわざ選んで使っていたという可能性はあると思います。

 過去の放火事件も含め、周囲の人々の証言から上がってくる情報を見ても、普通の人の感覚からかけ離れた異常行動が見られます。専門医が診れば、「診断をつけられる状態にあったのではないか」と想像するところです。

──オランザピンは統合失調症やうつ病の治療に使われると聞いています。

西島:第二世代の向精神薬で、比較的新しい薬です。副作用も弱く、「リスパダール」「エビリファイ」「クエチアピン」などと並んで、よく使われる薬です。

──事件の容疑者が精神疾患を患っているかどうかは分かりませんが、一般的に、精神疾患を持つ方が子育てをする場合、どんな困難や問題が起こるのでしょうか。