昨年12月12日、キーフの地下鉄車内でスマートフォンを操作しようとするウクライナ人女性。この日、ウクライナへの大規模なサイバー攻撃によって大手通信会社キーフスターを通じた携帯電話通話やインターネット接続が不可能となった昨年12月12日、キーフの地下鉄の駅構内でスマートフォンを操作しようとするウクライナ人女性。この日、ウクライナへの大規模なサイバー攻撃によって大手通信会社キーフスターを通じた携帯電話通話やインターネット接続が不可能となった(写真:REX/アフロ)

(山田敏弘・国際ジャーナリスト)

ウクライナ最大の通信会社のサービスが停止

 昨年12月12日、ウクライナに大規模なサイバー攻撃が仕掛けられた。犯行はロシアに関係するハッカー集団によるものと見られている。そしてこのサイバー攻撃は、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻してから最大規模の攻撃だった。

 標的となったのはウクライナ最大の通信事業者キーウスターだった。同社は約2400万人の携帯電話加入者と110万人以上の家庭用インターネットユーザーを抱えているが、この日、強力なサイバー攻撃を受け、サービスを停止せざるを得ない状況に陥った。

 朝からサービスが不安定になっていたが、その後、SNSを通じて、強力なサイバー攻撃の影響で「大規模な技術的障害」が発生していることを認めたのだった。

 この影響で、同社が提供するモバイルサービスやインターネット通信が遮断され、さらにはキーウ州の一部では空襲警報システムが停止した。ビジネスや社会生活に不可欠になっている重要な通信インフラを遮断されたことは、世界の政府関係者やサイバーセキュリティ関係者らにも衝撃を与えた。

 同社CEOは、「私たちはこのハッキング攻撃に対して、サイバー空間で対抗することができなかった。それゆえに敵の不正アクセスを食い止めるためにキーウスターのシステムを物理的にシャットダウンした」と語り、「戦争はサイバー空間でも起きている」と述べている。