ウクライナ軍が奪還した土地の森や畑には不発弾が転がっている。これは102ミリ迫撃砲弾ウクライナ軍が奪還した土地の森や畑には不発弾が転がっている。これは102ミリ迫撃砲弾(筆者撮影)

(高世 仁:ジャーナリスト)

ウクライナのダムを徹底破壊

 ウクライナ東部のドネツク州から北部のハルキウ州にかけて、ウクライナ軍がロシア軍から奪還した地域が広がっている。そこには、ロシアの占領がもたらした大きな負の遺産と今後の復興に向けての課題が遺されていた。

 ドネツ川は、ウクライナで4番目に長く、東部では最長の川である。軍事的に川は防衛線として機能することが多く、今回の戦争でも、この川をめぐって激戦が展開された。

ウクライナ東部イジュームにて。ロシア軍の渡河を阻止するためウクライナ側が自ら破壊したドネツ川に架かる橋。川をめぐる激しい攻防を物語るウクライナ東部イジュームにて。ロシア軍の渡河を阻止するためウクライナ側が自ら破壊したドネツ川に架かる橋。川をめぐる激しい攻防を物語る(筆者撮影)

 ドネツ川の支流にあるオスキルダムは、洪水調整、電力供給と漁業支援を目的に1958年に建設され、南北長125km、最大幅4km、面積130km2の貯水池をもつ。

昨年9月にロシア軍が破壊したオスキルダム昨年9月にロシア軍が破壊したオスキルダム(筆者撮影)

 10月下旬、そこを訪れた私が見たのは、上部の構造物から水門にいたる徹底した破壊のあとだった。発電施設も壊され、いまだに周辺住民への電力供給が滞っているという。

水門が破壊されて貯水機能は失われた水門が破壊されて貯水機能は失われた(筆者撮影)
水門から貯水した水が流出し、水位が低くなったオスキルダムの貯水池水門から貯水した水が流出し、水位が低くなったオスキルダムの貯水池(筆者撮影)

 ダムは緒戦からロシアの攻撃対象だった。ロシア侵攻の2日後の昨年2月26日、ロシア軍はキーウダムをミサイル攻撃したが、ウクライナ軍が迎撃に成功して被害は免れた。