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台湾・高雄市に建てられた安倍晋三元首相の銅像。写真は除幕式のもの(写真:中央通信社=共同)台湾・高雄市に建てられた安倍晋三元首相の銅像。写真は除幕式のもの(写真:中央通信社=共同)

1月13日に総統選を控える台湾は、長い歴史の中で、幾度となく他国の支配を受けてきた。中国の習近平国家主席は台湾統一の意欲を繰り返し表明しているが、台湾は拒み続けている。巨大な中国に比べると規模は小さいとはいえ、新型コロナのパンデミックではデジタル担当大臣オードリー・タン氏による的確な対応で注目されたほか、半導体生産では世界のトップを走るなど、存在感を高めている。そんな台湾社会のアイデンティティはいかにして育まれたのか。さまざまな歴史を解説しながら教えてくれるのが『台湾のアイデンティティ 「中国」との相克の戦後史』(家永真幸著、文春新書)だ。

(東野 望:フリーライター)

支配によって形づくられた独自のアイデンティティ

 現在、「台湾」が国交を結んでいるのは世界でたった13カ国に過ぎない。日本やアメリカをはじめとする多くの国々は台湾を独立した1つの国家と認めていないのだ。台湾は独自の統治機構を備え、安定した秩序を保っているのにもかかわらずだ。

 台湾と中国の関係は単純なものではない。常に対立して敵対関係にあるというわけではない。台湾の住民には中国大陸からの移民の子孫も多く、さまざまな文化を共有していたり、1946年に成立した中華民国憲法をいまも維持していたりと、単なる「敵と味方」と言い切れない関係性があるという。

 本書の筆者である家永真幸氏は、東京女子大学の准教授。中国政治外交史、現代台湾政治が専門だ。家永氏は本書で、台湾の地理的位置や人口構成をはじめ、16世紀に迎えたヨーロッパ世界との接触や、オランダの台湾統治時代におこなわれた漢人や日本人の台湾流入などを細かに解説している。

『台湾のアイデンティティ 「中国」との相克の戦後史』(家永真幸著、文春新書)台湾のアイデンティティ 「中国」との相克の戦後史』(家永真幸著、文春新書)

「台湾」を理解するために必要な支配の歴史

 漢人と日本人が流入した後の台湾では、鄭成功が明王朝復興の足がかりとして台湾のオランダ人勢力を駆逐して台湾統治を開始した。これが台湾で漢人が設置した最初の政府となった。一方で台湾を巡る他国からの支配は終わりを見せなかった。オランダ人の統治が終わっても結局は漢人に支配され、さらには日清戦争で日本が勝利した後は、日本の植民地になってしまう。

 この相次ぐ他国からの支配こそが、現在の台湾独自のアイデンティティを形づくる足掛かりとなっていると本書は指摘する。

台湾に住む人びとは長きにわたり、圧倒的な武力をもつ権力者によって「あなたたちは日本人である」「あなたたちは中国人である」という価値観を押しつけられてきた歴史を持ち、それに反発するなかから未来に向けてアイデンティティを模索する途上にあるという事実も重要ではないだろうか。