今回の試合は苦戦だったのか?

──10ラウンド目でタパレス選手が膝をつき、そのままKO勝ちをしたことについて、試合後、井上選手は「正直言って驚いた。タパレス選手からダメージを溜めているような表情が伺えなかった」と話していました。

杉浦:ダメージを溜めていることを悟られないようにする、心の強さがタパレス選手にはあったのだと思います。

 試合中、X(旧Twitter)では「この試合、タパレスは勝ちにきている」というポストが多く見られました。

 2022年12月13日に行われたバンタム級4団体統一王者決定戦で井上選手と対戦したポール・バトラー選手については、正直なところ、観ていて「勝つ気」が感じられませんでした。脚を使って、サバイヴすることだけに終始していた。

 タパレス選手に関しては、勝利を目標にやってきたという気迫が見られました。かなりのダメージはあったとは思いますが、それを表に出さない強さがありました。ただ、最後、パンチを受けて、心身ともにダメージを受けて集中力が限界にきたのだと思います。

終わってしまえば好敵手(写真:共同通信社)

──今回の試合、井上選手はタパレス選手に苦戦を強いられたというふうにも見られます。

杉浦:私は、「苦戦」という表現はふさわしくないと感じています。

 おそらく、前回のフルトン戦が完璧すぎただけだったのだと思います。フルトン戦は、井上選手のキャリアの中でも、ベスト・ファイトと言われています。フルトン戦と比較してしまうと、今回の闘いは、確かに完璧ではありません。攻めあぐねるような場面も多くありましたし、大振りの空振りもありました。

 とはいえ、やはり4団体統一戦なので相手も十分に強いわけです。2回ダウンを取ってKO勝ちというのは、やはり圧勝だったと思います。

──井上選手は、向こう1年はスーパー・バンタム級で闘いたい、という意向を示しています。2024年5月に向けて、マッチメイキングが進行中であると記者会見で話していました。次の対戦相手としては誰が有力候補でしょうか。