井上選手と闘う相手に求められる能力

──試合後の記者会見で、タパレス選手は、とにかく井上選手のスピードが速くてついていけなかったと語っていました。そこは、タパレス陣営の準備不足ということになるのでしょうか。

杉浦:そうですね。ただ、あれだけスピードのある選手に対してどのような準備をするかは、難しいところではあります。同じレベルのスパーリング・パートナーを探すこともできませんので。だから、想像を超えるスピードがあったのだと思います。

 スピードだけではなく、パワーでも劣勢ではありましたが、タパレス選手はそれも織り込み済みだったのではないかと感じています。守備を固めて打ち返す場面も見られました。井上選手からポイントをとることが難しいというのも理解していた。なので、ああいった感じの闘い方もたぶん想定の一つだったのではないでしょうか。

 守備を固めて致命的なパンチをもらわずに、どこかのタイミングでカウンターを決めるというのが、タパレス選手のほぼ唯一の勝利の方法だった。カウンターを当てる場面も実際にありました。ただ、それが井上選手に決定的なダメージを与えるには至らなかった。

 井上選手のほうが、一つも二つも上だった、という結果ですね。

タパレス選手のカウンターも光った(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

──井上選手レベルのスパーリング・パートナーを探すことができないというお話がありました。今後、井上選手と闘う選手は、どのような対策をすればいいのでしょうか。

杉浦:井上選手は、現在、PFPで1位、2位というレベルです。その強さの練習相手はこの世に存在しない、ということです。ただ、井上選手と闘うにあたって、いくつか対策と言いますが、条件のようなものはあると思います。

 まずは、ハートの強さです。リングに立った時にビビらない。あとは、井上選手の攻撃で倒されてしまったらそこで終わりなので、ディフェンス力も求められます。それからカウンターの上手さ。カウンターを打った時に、パンチにパワーを乗せなければ、相手を倒すことはできません。

 自分で言っておいてなんですが、こんなに全部を持っている選手はなかなかいないと思います。

 だからこそ、実際に勝とうとすることが本当に大変なのです。先ほど申し上げましたが、タパレス選手がやろうとしたことは間違いではない。ある程度、守備を中心にして闘い、タイミングよくカウンターを当てる。これは、井上選手に勝つための一つの秘策だと思います。