(英エコノミスト誌 2023年12月9日号)

人類救済を真剣に考えているのだろうか(写真は11月2日、ロンドンでリシ・スナク英首相と会談したイーロン・マスク氏、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

今や「人類救済」が大流行している。

「ファルコン9」ロケットは、人工衛星を軌道に乗せるために数日おきに打ち上げられている。

 今となってはありふれた光景だと思う読者もいるかもしれない。しかし、12月1日に米カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地に集まった観衆にとってはそうではなかった。

 まず高揚感が湧いてくる。

 そして、発射されたロケットが空の高みに向かいつつ再利用可能な一段目を切り離し、それがメアリー・ポピンズのような優雅さで地上の発射台に戻ってくると、感動した観客からため息がもれる。

 その後、ソニック・ブームと呼ばれる衝撃波がやって来るときも同様だ。

「何度見ても飽きない。まるでAC/DCのコンサートに来ているみたいだ」とある観客はつぶやいた。

 何を成し遂げたのかが分かったのはその後だった。

 この宇宙船は地政学的な貨物を積んでいた。韓国初の軍事偵察衛星だ。

 数日前に軍事偵察衛星を軌道に乗せたと報じられた世捨て人のような国・北朝鮮に追いつこうというわけだ。

 また、科学研究が目的の荷物もあった。

 アイルランド国立大学ダブリン校の学生が製作したアイルランド初の人工衛星がそれで、この国も宇宙時代に突入したことになる。