陸上自衛隊の戦車部隊(令和3年富士総合火力演習、陸自のサイトより)

1 はじめに

 これまで「10式戦車」、「16式機動戦闘車」次いで水陸両用戦闘車の開発経緯等について解説した。

 巷間あまり話題にはなっていないが、それらの装備化に大きく影響を及ぼす、現在も推進中の陸上自衛隊の大規模改編について説明したい。

 昭和29(1954)年に発足した陸上自衛隊は、東アジアの戦略環境の変化に応じ、順次編制装備を変更してきた。

 東西冷戦の激化に伴い13個師団1個混成団(沖縄)とした。

 次いで、冷戦の終結に伴い9個師団6個旅団態勢として人員装備品の削減を実施した。

 そして今般、平成26年以降に係る防衛計画の大綱(25大綱)に基づき、統合機動防衛力の発揮を重視して、平成29年度末から部隊改編を開始し、令和5年度末で一連の処置が概ね完了の運びとなった。

 南西方面への戦力転移をより一層迅速円滑に行うことが主眼で諸措置が実施されていると考えられる。

 防衛省は明らかにしていないが、ここで改編の前提になると考えられる脅威見積もりについて検討してみたい。

 我が国は①南西正面からの脅威、②朝鮮半島経由の脅威、③北方からの脅威があることに大きな変化はない。

 しかし、紛争生起の公算は①次いで②、ロシアがウクライナに係っている間は③の順であろう。

 これらを踏まえ、航空自衛隊は守備範囲に宇宙を加え、海上自衛隊・航空自衛隊は敵地反撃能力の保持を具体的に進めている。

 陸上自衛隊の立場からは、南西正面の脅威のみならず、朝鮮半島経由の脅威、北方からの脅威のいずれにも対応する必要がある。

 このため、戦力が充実している北部方面隊の2個師団2個旅団をいずれの脅威にも対応できるように戦闘実施部隊(普通科・特科・機甲科)のバランスを重視した編成としている。

 地域配備師団・旅団については津軽海峡・首都圏・中京経済圏・関西経済圏・九州経済圏・日本海沿岸地域・南西諸島の防衛に任じさせる計画となっている。

 以下今次の改編の概要について述べる。

2 基本的考え方

 従来の9個師団6個旅団体制においては、平時の任務は担当地域の防衛警備・災害派遣・民生支援等であった。

 有事の任務については、基本的に事案生起の地域によって当該正面への派遣部隊を状況に合わせ決定することとしていた。

(有事勃発の地域によって、どの部隊を当該正面に転用するかは概定していたとは考えられる)

 今回の改編では平・有事を問わず各々の地域において任務を遂行する部隊(地域配備師団・旅団)と有事には機動的運用をする部隊(即応機動師団・旅団)に区分することとしている。