主要プレーヤー5者とその法的立場

 この記事で取り上げる本紛争のキープレーヤーは、ハマス、パレスチナ自治政府、イスラエル、欧米等、国連等の5つとする。それぞれが身を置く世界線の前提を確認する。

1. ハマス

 ハマスは、パレスチナを国家と前提し、ガザ地区を実効支配する。ガザ地区は被占領地であるとし、自らはパレスチナ人民を代表する者との立場をとる(ハマスによる声明)。IAC上は、「紛争当事国に属するその他の民兵隊及び義勇隊の構成員(組織的抵抗運動団体の構成員を含む)」(以下、民兵隊)など(捕虜条約4条A(2))と自認している可能性が高い(そのほか、「イスラム聖戦」や「パレスチナ解放人民戦線」等の集団もあるが本稿では割愛する)。イスラエルとの平和的共存を拒否するが、イスラエルの国家性についての公式的な立場は不明。

2. パレスチナ自治政府

 パレスチナ自治政府は、パレスチナを国家と前提し、これを代表する政府である。ガザ地区は被占領地であるとし、自らがパレスチナ人民を代表する唯一の政府だとの立場をとっている(マフムード・アッバス議長による声明)。イスラエルとの平和的共存を認めるが(オスロ合意)、イスラエルの国家性についての現在の公式的な立場は明確ではない。

3. イスラエル

 イスラエルは、イスラエルを国家と前提し、パレスチナを国家と認めていない。ガザ地区の占領は2005年の一方的撤退で終了しているとの立場をとっている。ハマスをテロ集団と位置付けている。

4. 欧米等

 欧米の主要国(米、英、仏)および日本は、イスラエルを国家と承認し、パレスチナが国家として成立していることは認めていない。ガザ地区の位置づけについての立場ははっきりしないが、下で見るように占領地に適用される国際法の適用を認容しているように見える。ハマスをテロ集団と位置付けている。

5. 国連等

 国連やICCに加え、ロシア、中国といった139カ国は、パレスチナを国家と承認し、イスラエルも同時に承認している国も多い。ガザ地区は引き続きイスラエルの占領下にあるとの立場をとっている。ハマスをパレスチナと完全に区別することもないため、パレスチナに属する民兵隊として見ている可能性もあるが、パレスチナ自治政府からは分かれた武装集団と見る可能性もある。

 なお、ここで各プレーヤーがガザ地区を被占領地とみなすか否かを問題とした理由は、「占領」はIACの結果もたらされる状態ということで、IACの多くの部分が引き続き占領地にも適用されるためである。ICJはすでに2004年に、パレスチナ西岸地区におけるイスラエルによる防護フェンスの設置につき、占領地における当該行為は国際人道法および国際人権法に違反するとの勧告的意見を発している(ICJ壁事件)。

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