(英エコノミスト誌 2023年9月30日号)

プーチンの戦争がロシア経済を破壊しようとしている(写真は2月21日の年次教書演説、写真:ロイター/アフロ)

ウラジーミル・プーチン大統領はロシアの市民を経済的な苦痛から守れない。

 過去1年間でロシア・ルーブルほど冴えない展開をたどった通貨はほとんどない。

 昨年9月には、1米ドルで買えるのは60ルーブルを少し超える程度だった。最近ではほぼ100ルーブルが手に入る(図1参照)。

図1

 ルーブル安は、強い通貨と強い国家を同一視する一般のロシア国民にとって象徴的な打撃であると同時に、ロシア国内の緊張の原因にもなっている。

 昨年には中央銀行と財務省が緊密に連携するなどロシアの政策立案者の間にコンセンサスが存在したが、このルーブル安のせいで吹き飛んでしまった。

 今では、インフレが加速して経済成長が減速するなかで、中央銀行と財務省が敵対するようになった。この反目の行方にかかっているのは、戦争を効果的に戦うロシアの能力だ。

ひとまず経済の破綻を食い止められたが

 紛争の初期段階では、ロシア当局の任務は、経済の破綻を食い止めるという単純なものだった。

 侵攻開始直後には、ロシア国民が金融システムから資金を引き出すのを防ぐことが任務に組み込まれ、資本規制を導入し、政策金利を2倍に引き上げた。

 為替市場では一時、1ドル=135ルーブルまでルーブル安が進んだ。景気は急激に悪化した後、持ち直した(図2参照)。

 その後は財務省が、石油・ガスの売却で得られる巨額の収入で国防や福祉への多額の支出をまかない、景気を維持した。

図2

 石油・ガスの輸出が好調だったため、ルーブル相場も上昇した。おかげで輸入物価が下がり、ひいてはインフレ率も低下した。

 中央銀行にも財政支出拡大を許容するゆとりが生まれ、政策金利を侵攻前夜の水準よりも低くした。

 2022年の消費者物価上昇率は14%に達し、実質国内総生産(GDP)は2%縮小した。

 冴えない数字だが、事前の予想に比べればはるかに良かった。

 先日にはウラジーミル・プーチン大統領が「ロシア経済の回復段階は終わった」と述べている。