8月26日、ソウルで行われた処理水放出に反対するデモ(写真:Lee Jae Won/アフロ)

 福島第一原発の処理水放出からおよそ2週間が経った。福島県を中心に日本各地に中国から嫌がらせ電話が相次いでいるとの報道がなされているが、それに対して韓国国民はこの問題に理性的に対応していると言えるだろう。

デモ会場に人は少なく、水産物市場には人だかり

 処理水放出により売上減少が深刻になると韓国水産業界は憂慮していたが、処理水放出が始まった最初の週末、韓国各地の水産物市場は逆に客であふれていた。一方、野党「共に民主党」が総動員令を発した週末集会は思いのほか低調だった。共に民主党支持者を中心に再び始まった不買運動も世論の後押しを受けられておらず、国民的運動にまで盛り上がる気配はない。

 共に民主党は、日本の処理水放出に合わせて、8月22日から「第1次100時間緊急行動」を宣言し、最後の闘争場所に李舜臣(イ・スンシン)将軍の銅像が立っているソウル市光化門の広場を選んだ。文禄・慶長の役(1592~93年、1597~98年)の時、韓国海軍を率いて日本に大勝した李舜臣将軍は、韓国では「反日」を象徴する代表的な偉人だ。

 この集会には共に民主党だけでなく正義党などの野党4党、そして民主労総など左派市民団体が参加を予告していたので「勢力誇示」のデモとなるはずだったが、集会参加人員は予想より低調だった。警察側の推算では7000人、主催側発表では5万人で、双方の集計に大きな差があったが、いずれにしても曺国(チョ・グク)前法務長官の辞任当時、曺国支持者らによる「瑞草洞集会」は主催側発表で200万人が集まったとされていただけに、当時と比べてずいぶんと熱気が失われていたことは間違いない。

 民主党の李在明代表はこの日、「日本が越えてはならない線を越えた。人類に対する挑発であり、太平洋沿岸国家に向けた戦争を宣言したのだ。対抗して戦わなければなりません!」と参加者たちを激励した。集会は竹唱歌(反日を象徴する民衆歌謡)を合唱して始まり、大統領府のある龍山まで街頭行進をした後に解散した。