「グローバルサウス」の存在感を示したBRICS首脳会議(写真:SPUTNIK/時事通信フォト)
  • 8月24日に閉幕したBRICS首脳会議で、サウジアラビアやアルゼンチン、イランなどが新たに加わることが決まった。
  • 世界の国内総生産(GDP)に占めるBRICSの割合はすでに26%に達しており、「グローバルサウス」と呼ばれる発展途上国の存在感の高まりを印象づけた。
  • 今後はBRICSの盟主の座を巡り中国とインドの対立が激しさを増すことが懸念され、地政学リスクがさらに高まる可能性がある。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ(BRICS)の5カ国は8月22~24日、南アフリカのヨハネスブルクで15回目の首脳会談を開催した。ウクライナ戦争後、「グローバルサウス」の国際社会における存在感が高まっており、世界の注目が集まった。

 グローバルサウスとは、アフリカやアジア、南アメリカなど南半球に多い発展途上国を総称する言葉だ。はっきりした定義はないが、その中にあって、「勝ち組」グループとして改めて脚光を浴びているのがBRICSである。

 BRICSは米ゴールドマン・サックスの元エコノミスト、ジム・オニール氏が2001年に命名した言葉で、当初は南アフリカを除く4カ国で「BRICs」としていた。BRICS諸国は21世紀に入り、広い国土と多くの人口、豊かな天然資源を武器に急成長を遂げてきており、昨年の国内総生産(GDP)の世界に占めるシェアは26%に達している。人口では世界の約4割を占める。

 気候変動対策などでグローバルサウス諸国の発言力は強まっており、今回のBRICS首脳会談の最大のテーマは加盟国の拡大だった。23の国・地域が正式に加盟申請をしている中、イラン、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピアの来年1月からの加盟が認められた。2010年の南アフリカの加盟以来の出来事だ。加盟国は追加されるものの、BRICSの名称はそのまま維持される見通しだ※1。拡大後のBRICSのGDPの世界シェアは28%、人口のシェアは46%に上昇する。

※1「BRICS」の名称、「美し」過ぎて変更できない-加盟国拡大でも(8月25日付ブルームバーグ)

 主催国である南アフリカが重視しているアフリカ地域からはエチオピアとエジプトが選ばれた。エチオピアは人口が1億2000万人を超え、アフリカ連合(アフリカの55の国・地域が加盟する世界最大級の地域機関)の本部もある。エジプトも約1億1000万人の人口を擁する大国だ。

 中南米地域からはアルゼンチンが選ばれた。盟友関係にあるアルゼンチンのフェルナンデス大統領ともにBRICSにおける中南米地域の存在感を高めたいとするルラ氏の意向が働いたと言われている。