ロシア・ズベルバンクのATMに並ぶ人々(写真:AP/アフロ)

(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 2月26日、米国と英国、欧州連合(EU)、カナダはロシアの有力行を国際的な銀行間の決済システムであるSWIFTから排除すると決定した。同時に、上記の国々はロシア中銀の外貨準備の利用を実質的に遮断する措置に踏み切った。日本もこうした動きに合流し、日銀にロシア中銀が預託している円預金を凍結することになった。

【参考記事】
ウクライナ危機が問う、ロシア財政は「プーチンの戦争」にどこまで持続可能か(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69049)
実は、ロシア中銀資産を大量に保管する日銀が踏み切った取引禁止措置の奥の手(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69069)

 SWIFTからの排除は、ロシアの貿易と資本の取引を制限することにつながる。国際決済ができなければ、貿易と資本の取引が成立しないためである。言い換えれば、SWIFTから遮断することで、ロシアの国際収支危機を意図的に演出することができる。国際社会はロシアに対して、いわば「兵糧攻め」を仕掛けたと整理していいだろう。

【図:ルーブルの対ドル相場】

 同時に、外貨準備の利用を実質的に遮断したことで、ロシアは為替介入の原資を失うことになった。一部報道によれば、ロシアが持つ73兆円相当の外貨準備のうち、その8割強に当たる60兆円の利用が制限されたことになる。SWIFT遮断で生まれた通貨に対する下落圧力に抗うことができず、ロシアのルーブルは暴落することになった。

 ロシアは対抗措置として、各種の資本規制を導入するとともに、公定レート制を導入して通貨の下落を抑制する戦術に打って出た。国際金融のトリレンマの概念で整理すれば、ロシア経済の成長の源泉であった資本移動の自由を失う代わりに、為替レートの安定と金融政策の自立性を確保する道をロシアは選択したことになる。