取り調べの可視化でえん罪撲滅を

 日本では被疑者の取調べの際、弁護士が立ち会うことは許されておらず、外部から遮断された「密室」において行われています。このため、Aさんが体験したように、捜査官が理不尽な言葉を突き付けてきたり、威圧的な態度をとったりすることが少なくありません。

 その結果、被疑者が精神的に追い詰められ、真実ではないことを無理やり供述させられることがあり、日本ではえん罪事件が多数発生してきました。そして、足利事件、布川事件、厚労省元局長事件など、不当な取調べによって多くの当事者の人生が狂わされてきたのです。

 こうした反省を踏まえ、2016年、刑事訴訟法等の一部が改正され、2019年6月から裁判員裁判対象事件や知的障害、精神障害が疑われる事件について、取調べ時の録画が義務付けられました。しかし、録画の対象となる事件は全事件の3%未満。ほとんどの事件で、録画のないまま取調べが行われているのが現状です。

 そこで、日本弁護士連合会では来たる9月8日、冒頭で紹介したAさんのケースを取り上げ、『取調べの可視化フォーラム』をWEB開催することとなりました。

「私は虐待していない~日常の隣にある密室の取調べ~」
日本弁護士連合会:取調べの可視化フォーラム「私は虐待していない~日常の隣にある密室の取調べ~」【Zoomウェビナー開催】 (https://www.nichibenren.or.jp/event/year/2021/210908.html

 最近、無罪が相次ぎ話題になっている『揺さぶられっ子症候群(SBS)』事件は、赤ちゃんを育てる人たち誰もが巻き込まれうる問題です。この身近な傷害事件を取り上げ、取り調べの録音・録画をすべての事件に拡大させる必要性について一緒に考えましょう、というのがその主旨です。

(関連記事)また無罪確定、完全に崩れた「揺さぶられっ子症候群」事件の虚構(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65942

 当日は誤認逮捕されたAさん本人も当事者として登壇し、自ら体験を語る予定です。ちなみに、Aさんの事例は、本フォーラムと同タイトルの拙著『私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群』(柳原三佳著、講談社)の第2章で詳しく取り上げています。

 またフォーラムでは、Aさん以外の「揺さぶられっ子症候群」事件のえん罪当事者にもご登場いただき、過酷な取り調べの体験を語っていただく予定です。

 インターネットに接続できる環境があれば、どなたでも視聴可能です。ご興味のある方はぜひご参加ください。

「私は虐待していない~日常の隣にある密室の取調べ~」

■内容:揺さぶられっ子症候群(SBS)の考え方に基づいて
        乳幼児に対する虐待が疑われた事件の報告
    パネルディスカッション

■講師:Aさん(本事件の事件当事者)
    陳愛さん(本事件の弁護人/大阪弁護士会)
    工藤杏平さん(弁護士/第一東京弁護士会)
    柳原三佳(ジャーナリスト)

■申し込みフォーム(8月27日まで)
https://form.qooker.jp/Q/auto/ja/kashika/forum/