(英エコノミスト誌 2021年7月17日号)

中国は新しいザ・グレート・ウォールを築き始めたようだ

新型コロナウイルスを決して見逃さない姿勢と、ナショナリズムの台頭が相まって、孤立主義が芽生えている。

 中国がすぐには国境を再開しないことが明白になりつつある(ひょっとしたら、できないのかもしれない)。

 理由はたくさんある。

 まず、新型コロナウイルスの感染を決して許さないことが優れた政府のしるしであると指導者層が明言している。

 新規感染者を出した地区の行政担当者は解任されるため、当局は都市を丸ごと封鎖し、ごく小規模な集団感染でも征圧する。

「世界はカオス」、プロパガンダが煽る

 中国の一般市民は、新型コロナウイルスを恐怖や不名誉と結びつけて考える。

 感染者が1人出れば、その隣近所の住民、会社の同僚、あるいはクラスメートなど何千人もの人々が隔離されかねないことを知っているからだ。

 国境の外の世界はカオスの象徴になっている。

 プロパガンダを担当する機関は、新規感染者は外国からの訪問者と関わりがあると強調している。

 国営メディアは外国人(とりわけ米国人)を、あまりにもわがままで科学を軽蔑しているうえに、ウイルス管理に関する個人の権利のことばかり考えている人々だと描写している。

 人で賑やかなビーチにマスクを付けずに出て行く欧米人や、ロックダウン(都市封鎖)に反対するデモの映像は、今では中国のニュース番組の定番だ。

 外国が中国の厳格なアプローチを称賛しないのはけしからんと腹を立てている中国人も多い。

 これについては、心底不愉快に思っている面もあれば、プロパガンダ――米国の指導者は、自分たちが悲惨なほど無能であることとパンデミックで60万人もの死者を出したことを隠蔽するために中国を中傷している――に煽られている面もある。