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(富山大学名誉教授:盛永 審一郎)

 コロナ禍の中、世界では、すでに280万人を超えるというおびただしい数の死者が出ている。ドイツでクレマトリウム(火葬炉)の前に棺桶が積み重ねられていくニュースの映像を目の前にすると、ナチスのホロコーストの映像が重ねられて、筆者が関心を寄せてきた安楽死の問題などは贅沢な悩みとしてどこかに吹き飛んでしまう気がする。しかし、逆に安楽死への動きが世界では加速している。

ニュージーランド、スペイン、オーストリア、ポルトガル、さらにはペルーでも

 2020年10月30日、ニュージーランドで安楽死の合法化をめぐる国民投票が行われ、賛成が65.2%と半数を超え、2021年11月6日に新法が施行され、余命半年以内と診断され回復が見込めない患者に「死ぬ権利」が認められることになった。

 同年12月17日、スペイン上院は、長年にわたる議論を経て安楽死法案を賛成198、反対138で可決、さらに下院も21年の3月14日、医師の薬物投与による「積極的安楽死」を容認する法案を賛成202、反対141、棄権2で可決した。

 2020年12月11日、オーストリア憲法裁判所は、自死を願う人を助ける行為を刑罰犯罪とすることは自己決定権への侵害にあたるとして、22年1月1日を期して関連条項を削除すると表明した。

 2021年1月29日、ポルトガルは安楽死法案を賛成136、反対78、棄権4で可決、大統領の承認を得て成立する。

 また、南米ペルーでも難病の女性が、安楽死の権利を認めるよう政府を相手に訴訟を起こし、2月末に一審が訴えを認め、被告の保健省など複数機関が3月3日までにいずれも控訴しないと明らかにし、安楽死が行われる可能性が出てきた。以上のような報道があった。

 なぜ世界ではこのように安楽死や自殺介助への動きが加速するのだろうか。