ニット工場で働く技能実習生。外国人材の重要性はこれまで以上に高まる(写真:ロイター/アフロ)

(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

 将来の人口動態は、出生、死亡、国際移動の3つの変数により規定されるが、いずれもコロナ禍で大きく変動している。死亡数は、コロナ感染拡大による増加が懸念されたが、意外にも減少傾向へ転じている。コロナ感染を予防する行動が広がった結果、肺炎やインフルエンザなど他の疾患による死亡が抑制されたためだ。死亡数は2019年の138.1万人から2020年に137万人程度へ減った模様で、その分人口減少圧力が和らいでいる。

 だが、コロナ禍は出生数の大幅減少と外国人の流入停滞をもたらしており、全体では人口減少圧力が強まる方向だ。

 出生数は2019年の86.5万人から2020年に84万人程度へ減少した模様だが、この数字はコロナ禍の影響が表れる前の段階の数字だ。

 出生数の先行指標となる婚姻件数や妊娠届出数は、2020年春頃から大きく落ち込んでいる。特に、婚姻件数は2020年に前年比▲12%超と70年ぶりに1割を超える減少率を記録したとみられ、出生数を数年にわたって押し下げることになろう。コロナ禍の影響が本格化する2021年以降は80万人を一気に割り込む可能性が高い。

 感染が収束してもテレワークやオンライン授業の推進により外出機会がコロナ禍前に比べ一定程度減少したままとなる見込みで、婚姻件数や出生数は低迷しよう。2026年には丙午(ひのえうま)を控えていることもあり、少子化がしばらく加速しやすい状況にある。

注:婚姻件数、出生数ともに、2020年の値は12月分までの人口動態統計速報に基づく試算値。過去を振り返れば、出生数は婚姻件数に概ね連動している。

 

注:2020年の値は12月分までの人口動態統計速報に基づく試算値。2020年の婚姻件数は前年比▲12%超と大幅に減少する見込み。減少率が1割を超えるのは、1950年に▲15.1%を記録して以来、70年ぶり。2021年以降、出生数の大幅減少が懸念される。