国際司法裁判所(ICJ)に慰安婦問題の解決を付託するよう求める記者会見を開いた元慰安婦の李容洙氏(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(金 遥楽:フリーライター)

寝耳に水だった元慰安婦の記者会見

 文在寅大統領が与党・共に民主党幹部との懇親会で元従軍慰安婦に関して新年記者会見と異なる見解を示した。青瓦台(大統領府)は舌の根も乾かぬうちに文大統領と相反する発言を行った。文大統領の真意はどこにあるのだろうか。

 文在寅大統領は2月19日、民主党幹部と懇親会を開いた。米バイデン政権の誕生で、日米韓の協力体制が必須と思われる今、韓国にとって日韓関係の正常化は速やかに改善すべき課題だ。

 日韓関係改善への協力を要請するはずだった懇親会で文大統領は元慰安婦問題等に関して 「(解決策は)単純にお金の問題だけではなく、当事者が受け入れなければならない」と述べ、「日本の心からの謝罪」にかかっているという見解を示した。

 文大統領は、1月18日の新年記者会見で「2015年の韓日の慰安婦合意が両国政府の公式合意だった事実を認める」とし、「その土台の上で被害者も同意する解決策を見つけられるよう韓日間で協議する」と述べた。外交的な解決策を見出すといった大統領が「被害者の同意が重要」と強調し混乱が起きた。

 その空気を察知したのか、カン・ミンソク大統領府報道官は「慰安婦被害者の現在の状況を説明した後、韓日関係の正常化に向けた努力が話の趣旨だった」という言い訳を追加した。二転三転する韓国政府。文大統領自身の混乱ぶりを示唆している。

 そして2月16日、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さんが、国際司法裁判所(ICJ)に慰安婦問題の解決を付託するよう求める記者会見を開いて文大統領は逃げ場を失った(参考記事)。ICJに付託すると外交的に問題解決を図る余地はなくなる。

 一方、今後の米韓関係を考えると早急に日韓関係の改善を図らねばならない。15年の日韓慰安婦合意の裏の立役者であるバイデン米大統領に小手先の嘘は通用しない。バイデン政権が日韓関係改善に冷淡な日本の立場を理解できないはずはない。

 李容洙さんの要請は文大統領にとっては寝耳に水であり、すべてを曖昧にしたまま何とかやり過ごそうとしていた文大統領の行き場を塞いでしまったのだ。