首相就任時、菅首相の出身である秋田県では菅首相関連の特産品が売り出された(写真:アフロ)

 自身も地域資源の「6次産業化」に取り組む片桐新之介(地方創生コンサルタント)氏による「なぜ地方創生はうまくいかないのか」の5回目。最終回の今回は成功する特産品開発に求められる条件について。

 ※1回目から読む。

特産品を生み出そうという行為そのものが失敗のもと

(片桐新之介:地方創生コンサルタント、第6次産業コンサルタント)

 前回まで、特産品開発における失敗と成功の原因を事例も含めつつ述べてきた。ただ、失敗についてはそれが起こる構造的要因があると見ている。

 第2回第3回で、特産品開発の失敗を引き起こす原因として6つの項目を挙げたが、

(4)地方という特性を生かした戦略のなさ、あるいは地域の魅力を過信した誤った戦略づくり

(5)開発体制の甘さ、もしくは過剰傾向

(6)地域ならではの「利害関係者が絡みすぎる」事情

 について、なぜそれが起きるのかを政策の面から検証していきたい。簡単に言えば、特産品開発を「生み出そう」という行為がそもそも失敗のもとである場合が多いのだ。

 例えば、岩手県花巻市での特産品開発について、その政策「農工商観連携の推進」を見てみよう。

 花巻市としては、現状の課題を「地場産品は豊富にあるものの、その大部分が生産者や加工業者等による従来の生産・加工・販売方法にとどまっており、農業者と商工流通業者の連携による付加価値の高い商品の開発・販売は十分ではない状況です」と捉えており、特産品開発と販路拡大の支援として「地元の農畜産物を活用した商品開発の支援」「特産品の市内普及促進」「特産品の情報発信と販路開拓支援」を、市として取り組むという目標を掲げている。

 ただ、その成果をどう判断するかというと、「新たに市の支援により地場産品の高付加価値化に取り組んでいる事業所数」としている。その「成果指標設定の考え方(なぜ、この指標で成果を測ることにしたのか)」という説明を見ると、「地場産品を活用し、高付加価値に取り組むことで、農業所得が向上する効果を生み出し、地場産業が活性化していることを示す指標」であると定義している。

 なお、この事業所数に関しては「販売されていなくてもカウントする」としている。つまり、先に筆者が挙げた成功の定義、すなわち「投じた資金、時間に対して、想定していた効果が得られたこと」とはかけ離れているように見える。取り組んでおりさえすれば、それが「花巻産の農畜産物を活用した新たな加工品開発」に寄与しているというように「成果指標上」はみなされる。