一皿数百円の料理をつつきながら数百億円の商談

 こうした気持ちは個々人によって違いがあるかもしれない。しかし、福利厚生に甘えない生き方をすることで、ビジネスに向かう気持ちはより強くなる。知恵をはるかに絞ろうとするからだ。それがビジネススキルにとって、非常に有益なものになることだってある。

 たとえば交際費。みんな値段の高い店で接待をしようとする。外資はそういうものだと相手も思っている。だからこそ、カネだけ使って知恵のない接待はあまり面白がられないし、気持ちが通じ合わない。会社のカネで行きつけの高級店を予約しただけだろうなんて、勘繰りを入れられるのがオチだ。

 超大手機関投資家の大物役員を、煙モクモクの人気ホルモン焼きやで接待したことがあった。店内に入ったとたんにゴミ袋を渡される。お客様はいったい何ごとかと思ったようだが、行きつけには常識の、スーツににおいがつきすぎるので中にいれて封をしろということなのだ。個室ではないが、周りは若者が多くにぎやかで、我々が秘密の話をしても聞こえない。そもそも盗み聞きなどする気もない連中ばかり。数百円の皿をつつきながら、数百億円の投資の話をする。そんなアンマッチングを喜んでくれる人だと確信があった。結果は大うけして、意気投合した。嬉しかった。知恵を絞って最大の効果をあげる。これこそが私の喜びだった。