連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第25回。第1波の混乱の中、感染者と医療機関をつなぐ行政はどのような問題に直面していたのか──讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が、新型コロナウィルス感染症埼玉県調整本部の星・渡邊両氏に訊く。

讃井 新型コロナウイルス感染症について、行政の視点から書かれたもの、情報はあまりありません。今回は埼玉県の新型コロナウイルス感染症県調整本部長の星永進先生と埼玉県保健医療部感染症対策課入院調整・クラスター対策担当主幹の渡邊千鶴子さんに、行政の現場で起こっていたことをお聞きしたいと思います。

埼玉県 新型コロナウイルス感染症県調整本部長の星 永進氏

◎星 永進(ほし・えいしん)氏
1979年山形大学医学部卒業、1983年山形大学大学院修了。その後、山形大学第二外科、竹田総合病院呼吸器科などを経て1991年から埼玉県立小原療養所(現埼玉県立循環器・呼吸器病センター)呼吸器外科勤務。2008年、埼玉県立循環器・呼吸器病センター呼吸器外科長。2016年、同センター病院長。2020年4月より埼玉県福祉部参事兼保健医療部参事兼新型コロナ感染症埼玉県調整本部長。

◎渡邊 千鶴子(わたなべ・ちづこ)氏
東京医科歯科大学医学部保健医療学科卒業。東京大学大学院(修士課程)医学系研究科修了。1998年4月埼玉県庁入庁後、県内保健所(草加・越谷・朝霞)、医療整備課(感染症対策担当)、疾病対策課(難病対策担当)に勤務。2017年4月より保健医療部保健医療政策課感染症・新型インフルエンザ対策担当。2020年7月より保健医療部感染症対策課入院調整・クラスター対策担当主幹。

讃井 まず、県調整本部とは何を行うところなのかご説明いただけますでしょうか。

 新規感染者が出ると、各医療機関は発生届を各保健所に出します。各保健所では、保健師がその患者さんに症状や感染の状況(感染源が推測できるものなのかどうか等)の聞き取り調査をし、その情報を県調整本部に上げます。その情報を元に、患者さんが適切な医療を受けられるように病院等の手配をするのが県調整本部のおもな仕事です。

 その他、軽症者を担当する病院に入院していた方の症状が悪化した場合に、中等症・重症を受け入れる施設に転院させるという仕事も県調整本部が担っています。