5月5日、韓国ではプロ野球が無観客状態で開幕された(写真:Penta Press/アフロ)

 隣国を尻目に着々と日常を取り戻しつつある。新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込んだ韓国が規制を緩和し、6日から日常生活を送りながら感染対策をとる新たな方針へシフトした。政府の打ち出した「生活防疫」と呼ばれる政策だ。

 国民にはマスクの着用や手洗いの徹底を習慣付け、コロナショック以前の生活へ徐々に戻って行くことを目指す。公共施設の再開、会食や会合、イベントについてもソーシャルディスタンスの確保、会話を極力少なくすることなどの条件を課して容認した。

日本には真似できない、プライバシーにも踏み込む対策

 確かに国内の流行はほぼ収束したとみていい。ここ最近は1日の新規感染者数も10人前後。2月末には1日の感染者数が900人を超える日もあったが、徹底した対策が功を奏した。その内情を見聞きすると、未だ右往左往する日本とは大きく異なって「検査」「治療」「追跡」のシステムが確立されていたことが分かる。

 2月上旬には1日3000件程度だったPCR検査の体制が3月上旬になると1日で約1万8000件にまで引き上げられ、ここまでの検査総数は実に約60万件。ドライブスルー方式で検査が可能な71か所を含め国内ではPCR検査が600か所以上も設けられている。日本国内では当初、PCR検査を乱発すれば医療崩壊を招くと韓国の方針を「間違っている」と指摘していた関係者や嫌韓派らも数多くいたが、結果的に的外れに終わってしまった。

 PCR検査数を大幅に増やし、感染者が増えれば医療崩壊を招く危険性はもちろん高くなる。しかし、韓国ではあらかじめ症状に応じた患者の振り分けを厳密化。重篤・重症・中程度の患者は感染症指定病院か入院治療施設へ、軽症の場合も自宅ではなく生活治療センターに隔離される。常駐している医療スタッフが経過を常にチェックし、症状が悪化すれば迅速な対応を取ることも可能だ。一般の患者は全国に350以上もあるコロナ専用の「国民安心病院」で他の患者とは接触しないように診療が受けられる。これらのシステムによって感染が疑われる患者を一般の患者から遠ざけることで病院の負担と感染リスクを大幅に軽減。医療崩壊を防ぐことにもつながった。