ベネズエラのウゴス・チャベス前大統領。チャベス氏が掲げた「新しい社会主義経済」によってベネズエラ経済は大失速し、国民の暮らしは大変な事態に追い込まれた(2012年10月4日撮影、写真:ロイター/アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 16年ぶりの綱領改定が大きな議題となった日本共産党の第28回党大会が、1月18日に終った。ただその改定内容は、実に空しいものであった。「相手がいないのに自分だけで気負い込むこと。実りのない物事に必死で取り組むこと」を「独り相撲をとる」というが、まさしくそれが今回の綱領改定であった。

 日本共産党が戦後の活動の指針としてきたのは、1961年の第8回党大会で決定された「日本共産党綱領」(61年綱領)であった。その後、ソ連崩壊などさまざまな出来事に応じて、改定を繰り返してきたが、この綱領を大きく変えるものではなかった。

 全面的な改定が行なわれたのが2004年の第23回党大会であった。今回の党大会では、この綱領(04年綱領)の核心部分を削除するという改定が行われた

 この3つの綱領の中身を吟味すると日本共産党という政党が、いかに物事を正しく認識しないで、ご都合主義的な現状分析、情勢分析を行ってきたかがよく分かる。

ソ連などの社会主義国を徹底的に美化していた61年綱領

 61年綱領を今読めば、現実とは大きくかけ離れた分析に、多くの共産党員は恥ずかしくなるか、信じがたいものを見たと思うことだろう。

 例えばこの綱領では、「資本主義世界体制は衰退と腐朽の深刻な過程にある」「世界史の発展方向として帝国主義の滅亡と社会主義の勝利は不可避である」などと分析していた。だがこの数十年、現実に進んできたのは帝国主義(資本主義のこと)の滅亡ではなく、ソ連、東欧諸国など社会主義の滅亡であった。

 また社会主義陣営を「平和と民族独立と社会進歩の勢力」と規定していた。しかし事実はどうだったか。ソ連国内では、スターリンによって反対派の粛清、大弾圧が行われ、酷寒のシベリアには数百万人もの農民などが強制収容所に送り込まれ囚人労働に従事させられていたと言われている。