4月初めに新聞を読んでいたら、ある市の副市長に総務省の方が着任されたという記事が載っていました。私の知っている人ではなかったのですが、某政府機関で、被災地に派遣される消防や自衛隊の調整を担当していた幹部職員だったそうです。副市長への着任ぎりぎりまで現地での調整の仕事をしていたと、美談のような感じで書いてありました。

 しかし、私にとってそれはとても残念な記事でした。

 敗戦後の焼け野原の時期を別として、今回の地震は戦後最大の危機だと言われています。地震が発生してまだ3週間も経たない時に、現場での消防や自衛隊の活動を調整する担当の幹部が交代するのです。

 この官僚が着任した市役所は、地震の被害を全く受けていない西日本にある市です。着任が遅れたところで東北の各地の大変さに比べたら、なんということはありません。被災地の支援のため、消防や自衛隊の活動を調整して最大限に力を発揮してもらうことの方が、とても大切なはずです。

 震災復興にある程度のめどが立つまでは、副市長への出向を遅らせるべきでした。場合によっては、副市長への出向を取りやめ、地震に関係ない別のポストにいる人を出すように調整し直すということも、あってよかったのではないかと思います。なにせ長期戦が予想される戦が始まってから、3週間とたたないうちに幹部が交代するのですから。

 私は、太平洋戦争の時に、日本軍が戦争中であっても定期の人事異動を行っていた悪弊が今も改まっていないことに、残念な思いを禁じ得ませんでした。

 そして、この新聞の報道も、そのことをまるで問題視していませんでした。おそらくこれからも同じことが繰り返されるのだろうということを感じました。

霞が関の幹部人事は前例を打ち破れるか

 繰り返しますが、今回の東日本の大震災は戦後最大の危機だと言われています。

 通常、霞が関の幹部人事は、通常国会開けの6月から7月にかけて行われます。国会を乗り切るのが霞が関にとっては非常に大事なことなので、予算案や法律案が無事に国会を通過してから幹部の交代が行われるのです。