だが、「自動車メーカーが鉄鋼メーカーの言い値で鋼材を買うのは納得できない」といって「高炉を建設して、鉄鋼業界でも負けるな」というのは、とても「ストレッチ」や「ハイアウトプット」という範疇に収まる指示ではないだろう。
内部統制に力を入れすぎた日本企業
もちろん現代自動車グループにも、オーナー会長の指示に対してノーという答えはない。
こうした「強いリーダーシップ」「意思決定の速さ」「猛烈な拡大志向」以外に、日本企業には考えられない「猛烈さ」もある。
それは、法令順守や企業統治についてだ。
日本企業がここ数年、どれほど法令順守や企業統治改善のためにコストをかけてきたか。間違っているとは言わないが、こうした努力のおかげで果たして本当にクリーンでステークホルダーを向いた企業になったのか?
がんじがらめのルールばかりができ、挙句の果てに「リスクは取るな。無理をするな」という雰囲気がどんどん蔓延していったのではないか。
若者より海外を目指さない大企業
過去10年間で、日本の大企業でこうしたリスク管理のための部署がどれだけ肥大化し、どれほど強大になったか。そもそもこうした部署は、企業の成長を阻害する要因を摘み取る役割もあったはずだ。それが全く逆の役割になってしまった。
例えば、日本企業の経営者は「最近の若者は海外に行かない」と嘆いてみせるが、本当にそうか?
実は、海外にもっと行っていないのは、大企業の方ではないか。「危険地域では仕事をしなくていい」「そんな仕事を受注して万一失敗したら、誰が責任を取るのか」などの理由で、ちょっとでも危険があればエマージング市場への進出に二の足を踏むのは大企業ではないのか。
これに対して、現代自動車グループを代表とする韓国企業はどうか。