オーナー会長を中心としたスピード意思決定は、MK経営でも最大の強みだ。
わずか10年でグローバル生産体制を確立
2000年に現代自動車グループが独立した際、海外市場と言えば東南アジアや一部中東で、ほとんどが輸出だった。
わずか10年の間に、米国、中国、インド、スロバキア、チェコ、ロシア・・・あっという間にグローバル生産体制を構築した。現代自動車と子会社の起亜自動車という2つのブランドを使いながら、米国や中国には複数の生産拠点を築いた。
それだけではない。「高炉進出は先代からの夢」と語るや、あっという間に2つの高炉を建設した。現在、第3高炉の建設準備中だ。
この間に現代建設を買収し、さらに事業規模を拡大させている。
日本の大企業だったら、海外で自動車工場を1つ建設するための意思決定にどれだけの時間がかかるか。自動車メーカーが高炉に進出するなど、検討さえしないだろう。
大型投資、新事業参入、企業買収を次々繰り返す
これに対して現代自動車グループは毎年のように、大型投資、新規事業参入、企業買収という意思決定を繰り返してきた。
かつてゼネラル・エレクトリック(GE)を急成長させたジャック・ウェルチ元会長は、「ストレッチ経営」を掲げた。一見不可能な目標を掲げることで従業員の潜在能力を引き出すという狙いだった。
インテルのアンディ・グローブ元社長は、これよりもっと積極的な「ハイアウトプット経営」を掲げた。どちらも超強気経営者の代表だが、鄭夢九会長はもっとすごいかもしれない。
自動車メーカーとして、「自動車の販売をぎりぎりまで増やせ」とか「新型車の燃費を極限まで高めろ」と叱咤されるのなら、部下はまだ理解できるかもしれない。