ところが、この10年間で最も成長した自動車メーカーは現代自動車グループだった。昨年の世界販売台数は575万台で、トヨタ自動車、米ゼネラル・モーターズ(GM)、独フォルクスワーゲン(VW)に次ぐ4位に急浮上した。
世界で大躍進を続ける現代自動車
22兆5000億ウォン(1円=13ウォン)だったグループ売上高は94兆6520億ウォンと4倍に、純利益は1兆2000億ウォンから8兆4300億ウォンと7倍に跳ね上がった。36兆ウォンだったグループ資産規模も127兆ウォンに増えた。
韓国の財閥資産規模ランキングで5位だった現代自動車グループは、LGやSKグループを抜き去り、サムスングループに次ぐ2位の座を固めた。
こうした実績を背景に現代自動車グループは、銀行管理になっていた現代建設を買収した。現代建設は現代グループの発祥起業であり、5兆ウォンもの資金を投じて絶対に買収しなければならない企業だった。
買収直後の3月末、鄭夢九会長は一族を代表して父親の10周忌行事を済ませた。こうして満を持して現代建設本社がある「現代本社ビル」に戻ったのだ。
韓国の大企業の強さの源泉を「オーナー経営による強いリーダーシップ」と説明することが多い。ほとんどの場合、引き合いに出されるのがサムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ=69)会長の例だ。
サムスンの李健熙会長ほど評価されなかった
だが、父親が生前に後継者に指名してくれた世襲オーナーの李健熙氏に対して、鄭夢九氏は兄弟間の激しい権力闘争を勝ち抜いて盟主の座を奪った。
その間、熾烈な競争が続く自動車業界でトヨタをもしのぐ「成長王」となった。さらに鉄鋼事業にも本格進出し、高炉を建設。韓国ではポスコと争うまでに成長させている。
にもかかわらず、韓国でも鄭夢九氏は李健熙氏ほど評価されてこなかった。その最大の理由は、「父親さえ後継者に指名しなかった」という事実だろう。
このコンプレックスを跳ね返すためには「実績」で証明するしかなかった。この10年で鄭夢九氏は、はるかにたくましい経営者に育ったのだ。