では、鄭夢九氏はどんな経営者なのか。鄭夢九(MK)型経営と最近の日本の大企業の経営(JPN)型とを比較すると、その強さが分かりやすいかもしれない。
極めてシンプルなMK型経営

MK型経営の最大の特徴は、メッセージがシンプルなことだ。「目指すは成長・拡大で、リスクを取って実績を上げた者が高い評価を受ける」。
もともと、建設、造船、重工業など重厚長大型事業を中核に成長してきた現代グループの経営はシンプルだ。「他人より早く、他人より猛烈に、他人より斬新なアイデアで働け」だ。
韓国の経済界では、「現代グループには付き合いやすい人物が多い」とよく言われる。現代グループは社風が明るく、分かりやすいという意味だ。
徹底した信賞必罰主義
社風はトップの性格も反映している。サムスンの李健熙会長は内向的で思索家タイプだ。これに対して鄭夢九会長は、若い頃から建設現場や工場で従業員と酒をがんがん飲むタイプだった。
人事もシンプルだ。徹底した信賞必罰。現代自動車は昔から、役員が突然退任することで有名だ。品質問題が起きたり、経営事績が上がらないと、すぐにクビになる。
「役員は高額の報酬を得ているのだから、責任も取るべし」という厳格なルールがある。一方で、突然、退任していた元役員が復活することでも有名だ。
敗者復活は巧みな役員操縦術との見方もある。復活した役員は、以前より会長や企業に対する忠誠心が高くなり、猛烈に働くという。怖い話だが。