サウジリスク台頭でも上がらない原油価格

供給過剰で積み上がる原油在庫、さらに忍び寄る需要鈍化の影

2018.10.26(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54479
  • 著者プロフィール&コラム概要

 市場の需給の状態を判断するための原油在庫も再び積み上がりつつある。米国の原油在庫は今年6月以来の水準にまで増加し、石油製品の在庫を合わせると昨年10月以来の高水準である。世界の原油在庫も昨年第3四半期は日量90万バレル以上減少していたが、今年第4四半期に同5万バレル超の増加に転ずる見通しである。

 2014年後半からの原油価格の動向を振り返ると、供給過剰により原油価格は1バレル=40ドル割れし、協調減産などで供給不足に転ずると同70ドル超えした。今後は同60ドル弱にまで低下していくのではないだろうか。

苦境に陥っているサウジアラビア経済

 そう思っていた矢先に、深刻なサウジアラビアリスクの台頭である。

 前回のコラムで「カショギ氏殺害事件でサウジアラビアは苦境に追い込まれる」との見立てを示したが、筆者の予想を超える事態にまで発展してしまったようだ。

 国際社会からの非難に反発したサウジアラビアは当初国営メディアを通じて「原油を政治的武器に使う」とのメッセージを発した。市場関係者は「原油価格は1バレル=100ドルを超えるのではないか」と色めきたったが、10月15日にサウジアラビアのファハド・エネルギー産業鉱物資源相は「1973年のような石油禁輸措置を取る意向はないし、原油と政治とは別物だ」との考えを示した。さらにファハド氏は「10月の原油生産量は日量1070万バレルだが、近い将来日量1100万バレルに引き上げる用意がある。市場での必要性に応じて最大1200万バレルまで増産できる能力がある」と述べた。

 1973年の第1次石油危機の際、OPEC諸国は原油を政治的武器に使用したとされているが、その結果は大失敗だった。原油価格の高騰で先進国の原油需要が冷え込みばかりか、北海油田など非OPEC産油国の台頭を許してしまったからである。

 ファハド氏の発言は筆者の想定通りだったが、最後に「(我々が増産に努めても)原油価格が1バレル=100ドルを超えないと保証することはできない」と付け加えたのは意外だった。ファハド氏はこれまで原油価格の見通しにあまり言及してこなかったからだ。

 このような不規則発言が飛び出した背景に、サウジアラビア経済が苦境に陥っている事実があるのは間違いない。

 サウジアラビア株式市場では10月18日までの1週間の外国人投資家による売りが10.7億ドルに上り、2015年半ばに外資による直接購入が解禁されて以来最大規模になった(10月21日付ロイター)。10月22日の週になっても株式市場の売りが続いている。サウジアラビアは2016年から2年間で海外市場から680億ドル相当の借り入れを行っているが、カショギ氏殺害事件が明るみになって以来、通貨リヤルは売り込まれ、サウジアラビア国債の保証コスト(CDS)は30%以上上昇している。

3
スマートエネルギー情報局TOPに戻る
PR
PR
PR
バックナンバー一覧 »

POWERED BY

  • ソーシャルメディアの公式アカウントOPEN!
    TwitterFacebookページでも最新記事の情報などを配信していきます。「フォロー」・「いいね」をよろしくお願いします!
Twitter
RSS

 

経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

オリジナル海外コラム

米国、欧州、中国、ロシア、中東など世界の政治経済情勢をリアルに、そして深く伝えるJBpressでしか読めないオリジナルコラム。

>>最新記事一覧へ