サウジリスク台頭でも上がらない原油価格

供給過剰で積み上がる原油在庫、さらに忍び寄る需要鈍化の影

2018.10.26(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54479
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 また、イラン産原油輸入第1位の中国では、大連港に10月から11月初めにかけて過去最大量(計2200万バレル)のイラン産原油が到着することが明らかになっている(10月18日付OILPRICE)。イラン産原油輸入第2位のインドでも、9月の輸入量は前月比1%増の日量53万万バレルと下げ止まりの状態となりつつある(10月12日付OILPRICE)。

 イランのザンギャネ石油相は10月22日、「イラン産原油を他の産油国の生産では代替できない」との主張を繰り返した。市場関係者の間で「イラン産原油の減産」は上げ要因としての効力を失いつつある。

不透明さを増す中国の原油需要

 次に需要面である。

 中国の9月の原油輸入量は日量905万バレルとなり、5月以来4カ月ぶりの高水準となった。冬の到来に備え独立系製油所(茶壺)の輸入量が前月比24%増となったからである(10月15日付OILPRICE)。9月の中国国内の原油需要は引き続き好調だった。

 しかし、今後の需要動向は不透明さを増している。中国自動車工業協会が10月12日に発表した9月の新車販売台数は前年比11.6%減の239万台にとどまり、3カ月連続で前年水準を下回った。2桁の落ち込みは旧正月の時期を除けば異例である。対米貿易摩擦を受けた中国株の下落で新車購入の意欲が減退しているとの見方が一般的である。

 中国株式市場の時価総額は、今年1月から約3兆ドル減少した。対米貿易摩擦の激化による人民元の下落が資本流出を招いている(10月19日付ブルームバーグ)。中国当局は10月に入り、資本流出を阻止するため、国内居住者による対外投資を制限する「窓口指導」に乗り出しているが(10月12日付ロイター)、人民元の不安定化に歯止めがかからない状態が続いている。

 また、市場環境が悪化する中、ローンの担保として差し入れられた約69兆円相当の株式が大きな懸念材料となっている(10月17日付ブルームバーグ)。担保として差し入れられた株式の価値が下がれば、不動産ローンのデフォルトが高まるリスクが高まる(株式バブルの崩壊が不動産バブルの崩壊につながる)からである。このように中国株の下落が原油市場に悪影響を与える可能性が生じている(10月18日付OILPRICE)。

 当局としては思い切った金融緩和を行いたいところであるが、消費者物価が上がってきているのが悩みの種である。9月の中国のCPI(消費者物価指数)は当局発表では前年比2.5%増だが、民間統計では16%増にまで跳ね上がっている(10月16日付ウォール・ストリート・ジャーナル)。

 こうした情勢の変化に応じ、原油市場では「イランへの経済制裁」の次の材料として「忍び寄る需要鈍化の影」が浮上してきている(10月16日付日本経済新聞)。米中貿易戦争による中国経済の変調に加え、インドをはじめとする新興国の需要が減退するとの懸念である。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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